ベルギー・フラン

ベルギー・フラン：ユーロ導入以前のベルギー通貨

ベルギー・フランは、2002年にユーロが導入されるまでベルギーで使用されていた法定通貨です。補助通貨単位はサンチームで、1フラン＝100サンチームでした。本稿では、ベルギー・フランの歴史、言語表記、硬貨・紙幣、そしてルクセンブルクとの関係性について詳細に解説します。

歴史：フランス・フランの影響とラテン通貨同盟

ベルギー・フランの歴史は、ヨーロッパにおけるフランス・フランの広範な流通に深く関わっています。フランス革命やナポレオン戦争後の勢力拡大により、フランス・フランは西ヨーロッパで広く用いられるようになり、オーストリア領ネーデルラント（後のベルギー）でもクローネンターラーに代わって流通しました。その後、ネーデルラント連合王国成立に伴いオランダ・ギルダーに切り替えられましたが、ベルギー独立後、1832年にフランス・フランと等価の独自のフランが導入されました。この動きは、1848年のルクセンブルク、1850年のスイスにも波及し、1862年にはイタリアでも類似の制度を持つリラが制定されました。

1865年、フランス、ベルギー、スイス、イタリアはラテン通貨同盟を結成し、ギリシャも1868年に加盟しました。同盟内ではフラン、リラ、ドラクマといった通貨単位が用いられましたが、いずれも4.5グラムの銀、または290.322ミリグラムの純金に等価とされ、相互交換が可能でした。1870年代の金本位制の確立後も、この体制は1914年まで維持されました。

しかし、1926年のフランスにおける貨幣価値の下落はベルギーにも影響を与え、通貨への信頼が低下しました。この事態を受け、新たな金本位通貨として5フランに等価のベルガが導入され、ベルギーはラテン通貨同盟から脱退、同盟は同年中に消滅しました。ベルガはポンド・スターリングと金に対して固定レートが設定されました。1921年に成立していたベルギー・ルクセンブルク通貨同盟は存続し、1932年の完全な経済同盟の基盤となりました。1935年にはベルギー・フランが切り下げられ、ルクセンブルク・フランとの交換レートも変更されました。

第二次世界大戦中のドイツ占領下では、ベルギー・フランはライヒスマルクに固定されました。戦後の解放後、ベルギー・フランはブレトン・ウッズ体制に参加し、米ドルとの固定相場が設定されましたが、その後何度か変更されました。そして、1999年1月1日、ベルギー・ルクセンブルク・フランはユーロに固定され、2002年2月28日をもって、その法的効力は消滅しました。

言語表記：オランダ語とフランス語、そしてドイツ語

当初、ベルギー・フランの硬貨にはフランス語のみが記載されていました。しかし、1869年からはオランダ語表記の硬貨が導入され、その後は両言語が記載されるようになりました。両言語表記の硬貨は、オランダ語を左、フランス語を右としたものと、その逆のものとが存在しました。紙幣にも両言語が記載されるようになり、1992年からは表側にフランス語またはオランダ語、裏側にドイツ語ともう一方の言語が記載されるようになりました。ただし、通常の硬貨にはドイツ語は記載されていませんでした。

ベルギー国内におけるルクセンブルク・フラン

1944年から2002年にかけて、1ルクセンブルク・フランは1ベルギー・フランと等価でした。しかし、ルクセンブルク・フランの受け入れを拒否する事例もあったようです。

硬貨：多様な材質と額面

ベルギー・フランの硬貨は、1832年からユーロ導入まで、様々な材質と額面で発行されました。初期には銅貨と銀貨、金貨が導入され、その後、白銅貨やニッケル貨、様々な金属の組み合わせの硬貨が発行されました。第一次世界大戦、第二次世界大戦といった歴史的出来事は硬貨の材質や発行枚数に影響を与えました。

紙幣：複数の発行機関と額面

ベルギー・フランの紙幣は、ベルギー国立銀行と民間銀行が発行していました。額面も5フランから10000フランまでと幅広く、歴史的状況や経済状況を反映した発行がなされました。

まとめ

ベルギー・フランは、ベルギーの歴史、政治、経済を反映した通貨でした。フランス・フランとの深い繋がり、ラテン通貨同盟への参加、金本位制、そしてユーロへの移行という歴史的過程は、その変遷を物語っています。硬貨と紙幣のデザインや材質は、時代を反映する重要な証でもあります。また、ルクセンブルクとの通貨同盟関係も、ベルギー・フランの歴史を語る上で重要な要素です。

もう一度検索