ベルモット

ベルモット（Vermouth）は、白ワインを主体とし、ニガヨモギをはじめとする様々な香草やスパイスを配合して造られるフレーバードワインです。日本においては酒税法上、「果実酒」ではなく「甘味果実酒」として分類されます。

ベルモットは、食前酒としてそのまま飲まれることが多いですが、カクテルの材料や料理の風味付けにも利用されます。その多様な用途と独特の風味が、世界中で愛される理由の一つです。

ベルモットには、大きく分けて以下の種類があります。

スイート・ベルモット

甘口（sweet）のベルモットで、イタリアのピエモンテ地方などで主に生産されていたことから、イタリアン・ベルモット（Italian Vermouth）とも呼ばれます。ドライ・ベルモットと比較して、ハーブの風味がより強く感じられるのが特徴です。また、多くの場合、カラメルで着色されているため、淡褐色をしています。チンザノ（Cinzano）社やマルティーニ（Martini）社製のものが特に有名で、カクテル「マンハッタン」や「ネグローニ」などに使用されます。

ドライ・ベルモット

辛口（dry）のベルモットで、主にフランスで製造されたため、フレンチ・ベルモット（French Vermouth）とも呼ばれます。ノイリー・プラット（Noilly Prat）社製のものが有名で、カクテル「マティーニ」や「ギブソン」などに使用されます。スイートベルモットに比べ、すっきりとした味わいが特徴です。

カペリティフ

南アフリカ産の白ワインと薬草を使用して造られるベルモットです。19世紀後半から南アフリカでベルモットが好んで飲まれていましたが、イタリアやフランスから地理的に遠かったため、地元の薬草を使ったベルモットが製造されるようになりました。カペリティフは1906年にケープタウンで発売され、1930年発行のサヴォイ・カクテルブックにもカペリティフを用いたカクテルが掲載されました。しかし、製造元の財産抗争などの影響で1960年代頃に終売となり、その後はレシピと記録だけが残る「幻の酒」となっていました。2014年に当時のレシピを復刻した商品が発売され、見事復活を遂げました。

ベルモットは、その多様な風味と用途から、カクテル文化に欠かせない存在となっています。また、近年では、その風味の豊かさから、料理の隠し味としても注目されています。

参考文献
トビアス・スティード ベン・リード著/永井二菜 有限会社リンガフランカ訳『HOLLYWOOD COCKTAILS』グラフィック社 2000年

関連項目
酒

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