ベルリン王立磁器製陶所

ベルリン王立磁器製陶所（KPM Berlin）の歴史と製品

概要

ベルリン王立磁器製陶所（Königliche Porzellan-Manufaktur Berlin GmbH; KPM Berlin）は、1763年、プロイセン王フリードリヒ2世（大王）によって設立されました。ブランデンブルク選帝侯の紋章に由来するコバルトブルーの王笏が、全ての製品に刻印された象徴的なマークとなっています。KPMの磁器は、今日でも伝統的な技法を受け継ぎ、熟練の職人が一つ一つ手作りで制作しています。食器セットやフィギュアなど、多様な製品を15万種類以上も生み出し、その歴史と芸術性を世界に誇っています。


製品

KPMは、その歴史の中で数多くの食器セットやフィギュアなどを制作してきました。現在に至るまで、15万種類以上の製品が作られ、その数は増え続けています。創業以来変わらぬ製法で生産されているものも多く存在します。

食器セット

現在、10種類の食器セットが制作されています。

ロカイエ（Rocaille）：フリードリヒ大王が宮殿のために注文したロココ様式の食器セット。貝殻や葉をモチーフにした装飾が特徴です。ブレスラウ市街の宮殿、ポツダム市街の宮殿など、様々な場所のためにデザインされたバリエーションがあります。金縁や青のモザイク、自然な花などが装飾に用いられています。
ノイツィーラート（Neuzierat）：1767年にフリードリヒ・エリアス・マイヤーによってデザインされ、フリードリヒ大王のお気に入りとなった食器セット。葉や蔓、貝殻を模した模様が、滑らかな表面に調和して描かれています。「bleu mourant（無くなりそうな青）」と呼ばれる淡い青色が特徴です。
ノイオジール（Neuosier）：1770年にデザインされた食器セット。柳の枝を編んだものを思わせるレリーフが個性的なデザインです。ポットや皿の取っ手も、枝を模した形状となっています。フリードリヒ・ヴィルヘルム2世のために作られた豪華な花束と金色の木々の葉の装飾が施されたバージョンも存在します。
クアランド（Kurland）：1790年にヨハン・カール・フリードリヒ・リーゼがデザインした新古典主義様式の食器セット。英国の銀製品を参考に、古典的な織物や卵、真珠を模したレリーフが施されています。250周年記念には、新しいクラシックモデルである「クアランド・ブランコ・ノヴォ」と「クアランド・ロイヤル・ノア」が制作されました。
セレス（Ceres）：1912年にテオドール・シュムッツ・バオディスがKPM150周年記念のためにデザインした食器セット。後期アール・ヌーボー様式で、果物や穀物の穂が豊かなレリーフ装飾となっています。
ウルビノ（Urbino）：1930年代にトゥルーデ・ペトリがデザインした食器セット。新即物主義様式で、円と球を基にした機能的なデザインが特徴です。ニューヨーク近代美術館に常設展示されています。
アルカディア（Arkadia）：1938年にKPM175周年記念として制作された食器セット。新即物主義様式に基づき、ギリシャ神話にインスパイアされたデザインとなっています。
ベルリン（Berlin）：1996年にエンゾ・マリとのコラボレーションによって生まれた食器セット。重ね合わせた皿や鉢が花が開くようなデザインとなっています。


フィギュア磁器

KPMでは、様々な様式のフィギュアも制作されています。

お姫様の行列：1796年、ヨハン・ゴットフリード・シャドウのデザインによる新古典主義様式のフィギュア。
動物のフィギュア：ロココ様式から現代に至るまで、数多くの動物のフィギュアが制作されています。


花瓶

新古典主義の時代から現代まで、多くの芸術家によってデザインされた花瓶もKPMの重要な製品です。

トランペット型花瓶、Fidibus型花瓶：カール・フリードリヒ・シンケルによるデザイン。
ハレ型花瓶：バウハウス陶芸家マルグリート・フリードレンダーによるデザイン。ニューヨーク近代美術館に常設展示されています。


マーク

KPMの製品には、コバルトブルーの王笏マークと、絵付職人のサイン、絵付けマークが施されています。王笏マークは、フリードリヒ大王が王室の製作所として特権を与えた際に制定されたものです。絵付けマークは、装飾の種類によって色が異なり、絵付職人のサインは、それぞれの作品に唯一無二の個性を加えています。


歴史

KPMの設立以前にも、ベルリンで磁器製作を試みた例がありました。しかし、7年戦争や技術的な困難などの理由で失敗に終わりました。

1763年、フリードリヒ大王は、商人ヨハン・エルンスト・ゴツコフスキーから製陶所を取得し、王室磁器製作所ベルリンとして設立しました。大王は、従業員に規則正しい労働時間、平均以上の収入、健康保険、年金などを提供し、合理的で技術的な作業手順を確立しました。

フリードリヒ大王は、KPMの熱心な顧客でもあり、多くの磁器を個人で注文しました。彼の外交手段としてもKPMの磁器は活用されました。

その後、フリードリヒ・ヴィルヘルム2世が継承し、KPMはプロイセンにおける先進的な製作所として発展を遂げました。ロココ様式から新古典主義、アール・ヌーボー、バウハウス、そして現代デザインまで、KPMは時代時代の様式を取り入れながら、常に革新的な作品を生み出しました。

第二次世界大戦中は空襲により被害を受け、戦後はバイエルン州セルブに疎開しました。戦後、ベルリンに戻り、1988年には有限会社KPM王立磁器製陶所GmbHとなりました。1990年代以降は伝統的な手工芸技術と現代デザインの融合を目指し、著名なデザイナーとのコラボレーションなど、新たな取り組みを行っています。


参考文献

(参考文献リストは省略)


外部リンク

(外部リンクリストは省略)

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