ベル＝イル占領

ベル＝イル占領（1761年）

ベル＝イル占領は、七年戦争中の1761年にイギリス軍がフランスのブルターニュ沿岸に位置するベル＝イル＝アン＝メールを占領した軍事作戦です。イギリスは二度にわたる上陸を試み、最終的に島の占領に成功しました。この占領は、当時のヨーロッパの政治情勢と戦略的バランスに影響を与えました。

背景

1760年までの七年戦争の状況は、イギリスが優位に立っていました。フレンチ・インディアン戦争の勃発後、イギリスとフランスは1756年にお互いに宣戦布告しました。当初はフランスがミノルカ島を占領しましたが、その後はイギリスのウィリアム・ピットが主導権を握り、フランス沿岸部への襲撃を繰り返しました。これらの襲撃はフランスの士気を低下させ、沿岸防衛のために多くの陸軍を配置せざるを得ない状況を作り出しました。

1759年、フランスはイギリス本土への侵攻を計画しましたが、ラゴスの海戦とキブロン湾の海戦での敗北、そしてイギリスによる海上封鎖により、計画は頓挫しました。これにより、フランス海軍は戦力を十分に発揮できず、イギリスは1757年以降、フランスの植民地を次々と占領していきました。1760年にカナダを征服したことで、ピットはフランスが和平交渉に応じると考えていました。

モーリシャス遠征計画からベル＝イル攻撃へ

当初、ピットはインド洋にあるフランスの海軍基地、モーリシャスへの遠征を計画していました。しかし、和平交渉が近いとの見通しから、占領に時間がかかるモーリシャスよりも、より手近なベル＝イルを占領し、占領したイギリスまたはドイツの領土との交換材料にすることを考えました。また、スペインが参戦する可能性も考慮し、イギリス艦隊を本国近くに留めておく方が得策であると判断しました。

ピットはフランス海岸への遠征に方針を転換し、ベル＝イルの占領を推進しました。ベル＝イルはロリアンやブルターニュの海軍基地に近く、占領することでビスケー湾の制海権を握ることができます。この計画は1760年10月にも提案されましたが、首相のニューカッスル公爵や国王ジョージ2世に反対されていました。しかし、ジョージ2世の死去後、ジョージ3世が即位したことで、ピットは再び計画を提出しました。海軍のアンソン男爵とホーク提督は計画に反対しましたが、ピットは強行しました。1761年3月25日、ジョージ3世はベル＝イル遠征を裁可し、陸軍の指揮官にスタッドホルム・ホジソン、海軍の指揮官にオーガスタス・ケッペルを任命しました。

経過

1回目の上陸

プリマスに集結した遠征軍は、1761年3月29日に出港し、悪天候の中、7日かけてベル＝イルに到着しました。島の南端を偵察した後、ジョン・クロフォード率いる軍勢はベル＝イルの南にあるポール・アンドロでの上陸を試みました。しかし、フランス軍は事前に塹壕を築いて待ち構えており、クロフォード軍は激しい抵抗に遭い、多くの死傷者を出しました。奇襲は失敗し、クロフォードは撤退を余儀なくされました。その後、激しい嵐が発生し、多くの上陸用舟艇が破壊されました。

2回目の上陸と包囲戦

増援を受けたケッペルとホジソンは、再度の上陸を計画しました。島の守備を詳細に調査した結果、ポール・アンドロが最も上陸しやすいと判断し、再度の上陸を試みました。今度は、陽動作戦として西のソーゾンと北のサント＝フォワへの攻撃も行われました。

1761年4月22日、ジョン・クロフォード率いる上陸軍は再びポール・アンドロに上陸しましたが、またもや激しい抵抗に遭いました。一方、ハミルトン・ランバート准将率いるサント＝フォワへの陽動作戦は、意外にも抵抗を受けませんでした。フランス軍は島の北部の断崖がイギリス軍の侵攻を防ぐと考えていましたが、ランバートは断崖を登ることに成功しました。近くのフランス軍が反撃を試みましたが、艦隊の援護もあり、撃退に成功しました。

北部での攻撃が成功したため、クロフォードは自らの攻勢を中止し、船で北部に移動してランバートに合流しました。イギリス軍の指揮官はさらなる増援を送り、橋頭堡を確保しました。夜までにイギリス軍全軍が上陸し、フランス軍と住民はル・パレの城塞に篭城し、島の残りの部分を放棄しました。

イギリス軍は抵抗を受けることなく本国からの補給を受け取り、ル・パレを包囲し始めました。フランス軍の指揮官、ガエタン・グザヴィエ・ギレム・ド・パスカリス・サント＝クロワは、本土からの救援軍を期待して包囲を引き延ばそうとしました。ブルターニュ地方総監のデギュイヨン公爵はヴァンヌで軍勢を集結させましたが、イギリスのフリゲート艦がフランス海岸を封鎖していたため、救援は不可能と判断されました。1か月後の6月8日、サント＝クロワは救援が来ないと悟り、降伏しました。篭城軍は武器と軍旗を持って城塞から出て、ロリアンに戻ることを許可されました。

その後

フランスは当初、ベル＝イルをイギリスに保持させても、見返りはないと主張しました。しかし、ベル＝イルが私掠船とイギリス海軍の基地になる可能性があることを知り、その主張は現実的ではないと判断しました。その結果、2年後のパリ条約で、ミノルカ島と交換でベル＝イルをフランスに返還することで合意しました。

1755年にイギリスがアカディアを占領した際、強制退去させられたアカディア人の一部がベル＝イルに辿り着きましたが、ベル＝イルの状況に不満を持っていたため、1785年までにその大半がスペイン領ルイジアナに移住しました。

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