ベレンガーリオ1世 (イタリア王)

ベレンガーリオ1世：イタリア統一への闘いと悲劇的な最期

ベレンガーリオ1世（850年頃 - 924年）は、カロリング朝崩壊後のイタリアを舞台に、王位を巡る激しい争いを繰り広げた人物です。フリウーリ辺境伯としてキャリアをスタートさせた彼は、888年にイタリア王に選出されます。しかし、彼の戴冠は、イタリア王位を狙う他の有力者たちとの抗争の始まりにすぎませんでした。

王位継承戦争：グイードとの激突

ベレンガーリオの最大のライバルは、スポレート公グイードでした。グイードもまたイタリア王位を主張し、両者は激しい戦いを繰り広げます。トレッビア川の戦いでベレンガーリオは敗北を喫し、一時的に王位を追われます。グイードは自らローマ皇帝に戴冠するなど、勢力を拡大していきます。

しかし、ベレンガーリオは諦めませんでした。東フランク王アルヌルフの支援を得て、グイードとの戦いを再開、再び王位を獲得します。しかし、イタリアは外敵であるマジャール人の襲来にも苦しめられており、ベレンガーリオはブレンタ川の戦いで敗北を喫するなど、その統治は常に困難を極めました。

その後も、プロヴァンス王ルイ3世がイタリア王位を主張するなど、ベレンガーリオは幾度も王位を奪われ、奪還する試練を繰り返します。しかし、ルイ3世を破り、イタリア王として地位を確固たるものにしました。

ローマ皇帝への戴冠と晩年の悲劇

ベレンガーリオの権力は主にイタリア北部にとどまり、南部や中央部では独立勢力が依然として強大でした。しかし、ローマのイスラム教徒を撃退した功績を認められ、915年、教皇ヨハネス10世によってローマ皇帝に戴冠します。

しかし、平和な時代は長く続きませんでした。イヴレーア辺境伯らによる反乱や、ブルグント王ルドルフ2世の台頭など、イタリアは再び混乱の渦に巻き込まれます。ベレンガーリオはルドルフ2世との戦いで敗北し、王位を追われるものの、再び王位を奪還します。しかし、この際に雇ったハンガリー人傭兵による残虐行為が、多くの家臣の反感を買い、ベレンガーリオは924年、ヴェローナで暗殺されました。

ベレンガーリオ1世の遺産

ベレンガーリオ1世の治世は、イタリア統一を目指す壮大な試みでありながらも、絶え間ない戦争と陰謀によって彩られた激動の時代でした。彼は最終的にその野望を達成することはできませんでしたが、カロリング朝崩壊後のイタリアにおいて、重要な役割を果たしたことは間違いありません。彼の死後、皇帝位は40年近く空位となり、オットー1世の即位によって、新たな時代が幕を開けます。ベレンガーリオ1世の生涯は、中世イタリアの政治的・軍事的な複雑さを理解する上で、重要な手がかりを与えてくれます。彼の治世は、権力闘争の激しさ、そして統一国家実現の困難さを象徴するものでした。

家族

ベレンガーリオ1世はアスティ伯スッポーネ2世の娘ベルティラと結婚し、2人の娘をもうけました。長女ベルタは修道院長となり、次女ジゼラはイヴレーア辺境伯アダルベルト1世と結婚しました。

参考文献

・成瀬治 他 編『世界歴史大系 ドイツ史 1』山川出版社、1997年

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