ベンサレム

ベンサレム：理想郷の姿

ベンサレムは、哲学者であり政治家でもあったフランシス・ベーコンが遺した未完の小説『ニュー・アトランティス』に描かれる、架空の理想郷です。しばしば「ベンセレム」とも呼ばれます。この島は太平洋上に位置する孤島として設定されています。しかし、地理的に隔絶されていながらも、ベンサレムの住民たちは、世界各地を旅したソロモン館の賢者たちから最新の情報を受け取っており、世界情勢に精通しています。また、彼らは高度な科学技術を駆使し、豊かな生活を築いています。

偶然の出会い

物語の中で、ベンサレムは、ペルーから日本へ向かう船が嵐に見舞われ、食料不足と疫病に苦しむ中で、突如として水平線上に姿を現します。絶望的な状況に陥っていた船員たちは、この不思議な島に救いを求め、漂着します。

魅惑的な理想郷

ベンサレムに辿り着いた人々は、その技術力の高さ、住民の民度の高さ、そして自然環境の豊かさに驚愕します。多くの漂流者は、そのままベンサレムに住み着くことを望み、その魅力に惹きつけられます。一方で、故郷に戻った人々はベンサレムについて語りますが、その話は現実離れしていると受け止められ、真実として信じられることはありませんでした。

ベーコンの理想

ベンサレムは、ベーコンが思い描いた理想の社会を体現した場所です。科学的な探求が奨励され、知識が共有され、人々の生活が豊かに営まれる社会が、この島では実現されています。ベーコンは、この理想郷を通じて、科学技術の進歩が社会をいかに改善できるかを示そうとしたのではないでしょうか。

参考文献

山北篤監修、桂令夫ほか著『幻想地名事典』新紀元社、2006年
フランシス・ベーコン著、川西進訳『ニュー・アトランティス』岩波文庫、2003年

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