ベンジャミンバニーのおはなし

作品概要

ビアトリクス・ポターによって書かれた絵本『ベンジャミンバニーのおはなし』 (The Tale of Benjamin Bunny)は、1904年に発表されました。この作品は、1902年に世に出たポターの代表作『ピーターラビットのおはなし』の続編にあたり、主人公ピーターラビットのいとこであるベンジャミン・バニーを主要な登場人物としています。

あらすじ

物語は、うさぎのベンジャミン・バニーが、ある朝、近所に住む農家のマグレガーさんとその家族が馬車に乗って出かけるのを目にするところから始まります。マグレガー家が留守であることを確認したベンジャミンは、いとこのピーターが暮らす家に立ち寄ります。そこで彼が見たのは、普段着ている上着と靴を身につけていないピーターの姿でした。ピーターは服の代わりに赤いハンカチを羽織っていました。

ベンジャミンは、ピーターの上着と靴が、かつてピーターが大変な思いをしたマグレガーさんの畑にある案山子に使われていることを聞きます。ピーターを連れて、ベンジャミンは畑への潜入を計画します。二人は畑の端にある梨の木を伝って塀を乗り越え、マグレガーさんの畑の中に忍び込みます。

畑に入った二人は案山子のもとへ向かい、そこからピーターの上着と靴を取り戻すことに成功します。しかし、上着は雨に濡れていたためか、少し縮んでしまっていました。続いて、二人は畑で採れたタマネギをピーターの赤いハンカチに包んで持ち帰ることにします。畑の反対側の出口から帰ろうとしますが、ピーターは以前マグレガーさんに追い回された恐ろしい記憶が蘇り、落ち着きがなく、途中でいくつかタマネギを落としてしまいます。

さらに、二人は思わぬ遭遇に見舞われます。畑の中にいた一匹の大きな猫に見つかってしまったのです。慌てたベンジャミンとピーターは、近くにあった大きな籠の中に隠れます。しかし、猫は彼らが隠れた籠の上に悠然と乗り上がり、そのまま5時間もの間、その場に座り続けました。二人は身動きが取れず、籠の中に閉じ込められてしまいます。

夕方になってもベンジャミンが帰宅しないため、心配した彼の父親がついに探しに出かけます。畑にたどり着いたベンジャミンの父は、籠の上に座っている猫と、その下に隠れている息子とピーターを発見します。父は大胆にも猫に飛びかかり、温室の中に閉じ込めることで、二匹を無事救出します。そして、助け出したベンジャミンとピーターを連れて家へと帰ります。

しばらくして帰宅したマグレガーさんは、畑に誰かが入り込んだ形跡や、温室に閉じ込められている猫を見て首を傾げます。一方、家に帰ったピーターは、以前なくしてしまった上着を取り返してきたため、母親に叱られずに済みました。持ち帰ったタマネギは、勝手口の天井から吊るして保管されました。

ベンジャミンとピーターの関係性

本作において、ベンジャミンはかつての出来事で落ち着きをなくしているピーターを冷静にリードし、畑からの脱出を試みます。しかし、後に発表された別の作品『キツネどんのおはなし』では、大人になったベンジャミンが自分の子供を誘拐され取り乱してしまうのに対し、ピーターが彼を助け、子供の奪還に一役買うという逆転した関係性が描かれており、二匹の成長と共にその関係性の変化が窺えます。

ベンジャミンバニーのおはなし