ペドロ・アルペ

ペドロ・アルペの生涯と功績

ペドロ・アルペ（Fr. Pedro Arrupe, S.J.）は、1907年11月14日にスペインのビルバオに生まれ、1991年2月5日に84歳で亡くなったカトリック司祭であり、イエズス会の第28代総長として多大な影響を与えた人物です。彼の生涯は信仰と奉仕に捧げられ、特に日本での活動や社会正義の促進に貢献しました。

生い立ちと教育

ペドロは裕福なバスクの家庭に生まれ、ビルバオのサンティアゴ使徒学院で学びました。その後マドリード大学の医学部に進学し、そこでノーベル賞受賞者セベロ・オチョアや生理学のパイオニアであるフアン・ネグリンから教えを受けました。1927年にイエズス会に入会し、オランダのフォルケンブルクでの養成を経て、1936年に司祭として叙階されました。修練期中にはアメリカの聖マリア学院やクリーブランドで過ごしました。

日本での活動

1940年、ペドロは日本に派遣され、山口カトリック教会で主任司祭となります。1941年12月8日、真珠湾攻撃が行われた日は、日本では無原罪の聖母の祝日であり、彼はスパイ容疑で逮捕されます。厳しい尋問を受ける中で、彼は精神的に大きく成長し、この経験が彼の霊的変容につながったと後に述懐しました。約1か月後、アルペは釈放され、1942年3月から広島の長束修練院の院長となります。

1945年8月6日、広島に原爆が投下された際、アルペは市内で被爆者の救護に努め、約200人の被爆者を手当したことで広く知られています。彼はその経験を「私の記憶に刻まれた歴史の外の永遠の経験」と表現しました。戦後は広島での司牧活動を続け、1958年にはイエズス会の初代日本管区長に選ばれました。

イエズス会総長としての指導

1965年に第31回イエズス会総会で彼は第28代総長に選ばれ、1983年までその職を務めました。彼は「我らの今日の使命: 信仰への奉仕と正義の促進」という文書において、社会正義の促進を掲げました。しかし、これに対する批判もありましたが、大多数の支持を受ける結果となりました。このような彼の指導は、第2バチカン公会議の影響を受けたものであり、信仰と政治との関係を再定義するものでした。

解放の神学と中南米

ペドロ・アルペは、第2バチカン公会議の教令に基づく議論が進む中、特にラテンアメリカでは貧富の格差と社会正義の問題が重要課題として取り上げられる現象を目の当たりにしました。彼は中南米のイエズス会士とともに貧困問題の解決に努め、解放の神学という新たな動きにも関与しました。この中で、アルペは彼らの殉教的な姿勢を称賛し、彼自身も信仰をもって人々と共にあることを重視しました。

晩年と影響

1981年、アルペは発作を起こし、以降療養生活を送りました。彼は1983年のイエズス会総会で総長の退任を余儀なくされ、以後は主に祈りを通じて教会に寄与しました。1991年に彼は亡くなり、多くの人々に惜しまれました。彼の葬儀は大勢の参列者で溢れ、彼の生涯を通じた信仰と奉仕は今も多くの人々に感動を与え続けています。彼の著書『キリストの横顔』は今なお多くの読者に読まれています。

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