ペドロ2世 (ブラジル皇帝)

ペドロ2世：ブラジル帝国の光と影

ペドロ2世（1825年12月2日 - 1891年12月5日）は、ブラジル帝国の第2代皇帝であり、その最後の皇帝でした。父は初代皇帝ペドロ1世、母はオーストリア皇帝フランツ1世の娘マリア・レオポルディナ。彼は、激動の時代にブラジルを導き、その治世はブラジルの近代化と奴隷制廃止への歩みとして特徴付けられます。

幼少の即位と親政

1831年、父ペドロ1世が退位し、わずか5歳で皇帝の座に就きました。幼少のため、当初は摂政政治が行われましたが、政情は安定しませんでした。1840年、14歳で親政を開始し、ブラジル生まれの君主として国を統治することになります。

リベラルな君主

ペドロ2世は、学問や芸術を愛好するリベラルな君主でした。フリーメイソンの会員でもあり、カトリック教会を抑圧する一方、奴隷制の廃止に尽力しました。リオデジャネイロの森林再生を指示し、それは現在のチジューカ国立公園という世界最大の都市森林となりました。また、鉄道の建設を命じ、ブラジルに初めて電話とタイプライターを導入するなど、近代化を推進しました。

三国同盟戦争と帝政の終焉

20万の兵を動員した三国同盟戦争（1865年 - 1870年）では、パラグアイの首都アスンシオンを陥落させるなど、軍事的な成功も収めました。しかし、糖尿病に苦しみ、次第に統治能力を失っていきました。また、奴隷解放令に署名した長女イザベルが地主層の支持を失い、軍部のクーデターにより、1889年に廃位されました。

亡命と死、そして国民的英雄へ

ポルトガルへの亡命後、パリで失意のうちに亡くなりました。しかし、帝政廃止後、ペドロ2世はブラジル国民から尊敬を集めるようになり、ブラジル史上最高の政治家と称されるようになりました。1921年には、独立100周年を記念して、遺体がブラジルに帰還しました。

遺産

ペドロ2世が居住した旧皇居は、現在はブラジル国立博物館となっています。また、ペトロポリスの夏宮殿は帝国博物館となり、当時の皇帝一家の遺品が展示されています。彼の肖像は、かつての10クルゼイロ紙幣にも使用されていました。

子女

皇后テレサ・クリスティナ・デ・ボルボン＝シシリアスとの間には、アフォンソ、イザベル、レオポルディナ、ペドロの2男2女が生まれましたが、男子は夭逝しました。長女イザベルが家長および名目上の皇帝位を継承しました。

ペドロ2世の生涯は、ブラジルの近代化に尽力しながらも、時代の波に翻弄された君主の姿を映し出しています。彼の遺産は、今もブラジル国民の心に深く刻まれています。

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