ホアキン・ニン＝クルメル

ホアキン・マリア・ニン＝クルメル

ホアキン・マリア・ニン＝クルメル（Joaquin Maria Nin-Culmell、1908年9月5日 - 2004年2月14日）は、キューバにルーツを持つスペイン系の作曲家、ピアニスト、そして指揮者です。彼は著名な音楽家ホアキン・ニン（1879年 - 1949年）とキューバ人歌手ローサ・クルメルを両親に持ち、フランスの文人アナイス・ニンを姉に持ちます。両親の離別後、母ローサに伴って欧米諸国を転々として過ごしたため、姉アナイスと同様に、広い国際的視野を持つ人物となりました。

生涯と教育

ニン＝クルメルはベルリンで生を受けました。両親の離婚後、母と姉と共にニューヨーク市で約9年間を過ごします。15歳の時、家族と共にヨーロッパに戻り、パリのスコラ・カントルムで学びを深めました。その後、パリ音楽院に進学し、1934年には作曲科を首席で卒業する栄誉を得ます。1930年代初頭には、当時のスペインを代表する革新的な作曲家であったマヌエル・デ・ファリャに師事し、和声、対位法、フーガといった音楽理論を徹底的に修得しました。

アメリカでの活動と教育者として

1939年、彼は再びアメリカ合衆国へ渡ります。バーモント州にあるミドルベリー大学で2年間教壇に立った後、マサチューセッツ州のウィリアムズ大学音楽学部で10年間にわたり教鞭を執りました。1950年には、カリフォルニア大学バークレー校の音楽学部に迎え入れられます。バークレーでの在任中、彼は学生オーケストラの指揮を務める傍ら、サンフランシスコ湾岸地域にある様々な音楽団体とピアニストとして共演を行いました。1952年には、彼自身の作品である《ピアノ協奏曲ハ長調》を、ピエール・モントゥーが指揮するサンフランシスコ交響楽団と共に演奏しました。さらに1953年3月には、同交響楽団の客演指揮者を務めるなど、多方面で才能を発揮しました。

作曲活動と作品の変遷

彼の初期の作品には、民族的な要素が顕著に見られます。例えば、混声合唱のための《キューバ民謡》や、ソプラノとピアノのための《カタルーニャ民謡》、そして管弦楽曲《ガスパル・サンスの主題による8月の変奏曲》などが挙げられます。しかし、時を経るにつれて、その創作の主題は民族色から宗教的な色彩を強めていきます。フランス政府からの委嘱を受けて作曲された《神秘の交響曲》は、オルガンと合唱を含む大作です。また、1971年にはサンフランシスコ聖メアリ大聖堂の依頼に応じ、《ミサ曲》を書き上げています。

演奏活動と栄誉

ニン＝クルメルは、生涯にわたって演奏活動を精力的に続け、フランス、イタリア、イギリス、スイス、キューバ、スペイン、デンマークといった国々で活躍しました。1974年にカリフォルニア大学バークレー校を退職した後も、作曲と演奏の両立を図り、地元の若手音楽家たちの指導にも情熱を注ぎました。彼は国際現代音楽協会の会員であり、作曲家フォーラムにも名を連ねました。また、父ホアキン・ニンに倣い、マドリッドのサン・フェルナンド王立学士院の会員に選ばれています。さらに、バルセロナのサン・ジョルディ芸術アカデミーの会員にも選出され、その功績はフランス政府からも認められ、レジオン・ドヌール勲章が授与されました。

晩年と legado

高齢になってもなお旺盛な作曲活動を続けていましたが、2001年にスペインで自身のオペラの上演に関わっていた際、脳卒中を患いました。これにより視覚に障害を負い、音楽活動の継続が困難となりました。2003年のクリスマスには心臓発作に見舞われます。そして、その一月後の2004年2月14日、カリフォルニア州バークレーにて95歳でその生涯を閉じました。

教育者としての長年の活動により、ニン＝クルメルは多くの音楽家や作曲家を育成しました。彼の遺族としては、姪ゲイル・ニン＝ローゼンクランツ（サンフランシスコ在住）と甥チャールズ・ソーヴァルド＝ニン（メキシコ市在住）が健在であり、それぞれに孫がいます。

また、彼は文筆活動も行い、姉アナイス・ニンの有名な『アナイス・ニンの日記』4巻に序文を寄稿しています。

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