ホイスト

ホイスト（Whist）

ホイストは、イギリス発祥のトランプゲームであり、トリックテイキング形式のゲームの一例です。主に4人のプレイヤーが2つのチームに分かれて競争します。その歴史は18世紀から19世紀にかけてのものであり、現在でもイギリスの人気ゲームの一つです。特に、ブリッジの前身とも言えるホイストは、トランプゲームの中で重要な位置を占めています。

歴史

ホイストの歴史は明確ではなく、多くの謎を秘めています。1674年にチャールズ・コットンによって出版された「The Compleat Gamester」には「Ruff and honours」という非常にホイストに似たゲームが紹介されています。このゲームではプレイヤーの手札は12枚で、残りの4枚から切り札をめくる仕組みでした。ホイストはこのようなゲームから進化したと考えられています。

18世紀の初頭には、戦術が科学的に考えられるようになり、ホイストは知的な楽しみとして多くの人々に支持されました。エドモンド・ホイルが1742年に発表した「A Short Treatise on the Game of Whist」は、このゲームの権威ある書として広まり、以後、ゲームのルールの参考書として「ホイル」と呼ばれるようにもなりました。

20世紀に入ると、ホイストにビッドという概念を取り入れたオークション・ブリッジやその改良版であるコントラクトブリッジが登場し、結果的にホイストの玩具的存在が減少しました。日本でも明治時代にウイストやウヰストという名前で紹介されましたが、ポイントトリックゲームにアレンジされ、伝統的なホイストは一般的には広まりませんでした。

遊び方

ここでは、ホイストの基本的なバリエーションであるショート・ホイストのルールについて解説します。ルールはシンプルながらも奥が深いものとなっています。

ゲームには通常の52枚のカードを使用し、ジョーカーは用いません。4人のプレイヤーが2人一組のチームに分かれ、向かい合って座ります。最初にディーラーを決定し、時計回りに全員にカードを均等に配ります。ディーラーは自分の最後の1枚を転向させ、そのカードのスートがこのラウンドの切り札となります。ディーラーはこのカードを最初のトリックが始まるまでは手元に戻さないというルールがあります。

次に、時計回りにプレイが進行します。最初のトリックは、ディーラーの左隣のプレイヤーがリードします。一般的なトリックテイキングゲームと同じく、マストフォロールールが適用されます。

13回のトリックが終わると、7つ以上のトリックを獲得したチームは、そのトリック数から6を引いた値を得点に算入します。この得点は「オッド・トリック」と呼ばれます。また、ゲームはいずれかのチームが5点を達成した時点で終了します。イギリスでは通常、3ゲームのうち2ゲームを先取した側が勝者とされ、これをラバーと呼びます。アメリカでは、しばしば7点が勝利点とされます。

ロング・ホイスト

ロング・ホイストは、ショート・ホイストよりも古くから存在するバリエーションです。基本的な進行はショート・ホイストと同様ですが、ゲームは9点先取で終了します。チームの手札内にオナー・カード（切り札スートのA、K、Q、J）が3枚または4枚あればボーナス得点が与えられますが、ボーナス得点によって勝利が決定することはありません。

フィクションにおけるホイスト

ホイストはさまざまなフィクションに登場します。ジュール・ヴェルヌの小説『八十日間世界一周』では、主人公フィリアス・フォッグがホイストに興じるシーンが描かれています。また、セシル・スコット・フォレスターのホーンブロワーシリーズや、エドガー・アラン・ポーの『モルグ街の殺人』、さらにはシャーロック・ホームズシリーズでも様々な形でホイストが言及されています。

このように、ホイストは長い歴史を持ち、多くの場面で愛され続けているゲームなのです。

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