ホスローとシーリーン

ホスローとシーリーン：愛と悲劇のペルシャ叙事詩

「ホスローとシーリーン」は、12世紀のペルシャの詩人ニザーミーによって書かれた、アゼルバイジャンの悲劇的な恋愛を描いた叙事詩です。サーサーン朝の王ホスロー2世と、彼の妃となるアラム人（またはアルメニア人）の皇女シーリーンの恋物語を中心に展開され、美、愛、そして運命の葛藤が織りなす物語は、多くの人々の心を捉えてきました。

あらすじ

物語は、ホスローの誕生から始まり、彼の幼少期の教育、そして父王との葛藤が描かれます。夢の中で祖父アヌーシールワーンから、シーリーンという名の妻、シャブディーズという名の愛馬、バールバドという名の音楽家、そして広大なペルシャ帝国を与えられるという吉報を受けます。

ホスローは、友人の画家シャープールからアルメニアの王妃マヒーン・バーヌーとその姪シーリーンの美しさを聞かされ、恋焦がれます。シャープールはシーリーンにホスローの姿を伝え、彼女もまたホスローに惹かれます。シーリーンはホスローを追ってマダーインへ向かいますが、ホスローは父の怒りを買い、シーリーンを探してアルメニアへ旅立ちます。

旅の途中、ホスローは入浴するシーリーンを目撃しますが、身分の違いから互いを認識できません。その後、ホスローはアルメニアで歓待を受けますが、シーリーンがマダーインにいることを知ります。再びシャープールがシーリーンを連れてくるように命じられますが、シーリーンがアルメニアに戻った時には、ホスローは父の死のためにマダーインへ帰国していました。

愛し合う二人は、ホスローが将軍バフラーム・チュービーンの反乱によってアルメニアへ逃亡するまで、すれ違い続けます。アルメニアでついにシーリーンと再会したホスローは歓待されますが、シーリーンはホスローがまず宮殿に戻ることを求め、結婚を承諾しません。ホスローはコンスタンティノープルへ向かい、カエサルの娘マルヤムとの結婚を取り決め、バフラーム・チュービーンとの戦いを支援してもらうことに成功し、王位を取り戻します。

一方、建築家ファルハードはシーリーンに恋をし、ホスローの恋敵となります。ホスローはファルハードにベヒストゥン山に階段を彫るという不可能な仕事を命じ、彼を排除しようとします。ファルハードがシーリーンの死を聞かされると、彼は絶望して自殺します。その後、マルヤムが亡くなり、ホスローはシーリーンに求婚しますが、その前にShekarという女性と関係を持ちます。シーリーンはホスローの不誠実を責め、城への入場を拒否します。

様々な出来事を経て、シーリーンはついにホスローとの結婚に同意しますが、ホスローとマルヤムの息子シールーイェもまたシーリーンに恋をします。シールーイェは父ホスローを殺害し、シーリーンに結婚を迫ります。シーリーンはシールーイェとの結婚を拒み、自殺します。二人の死後、ホスローとシーリーンは一つの墓に共に眠ることになります。

ペルシア文学における影響

「ホスローとシーリーン」は、ニザーミー以前から語り継がれてきた物語ですが、ニザーミーによって最高のロマンス文学へと昇華されました。彼は物語のロマンス部分に焦点を当て、歴史的な記述を最小限に抑えました。ニザーミーの作品は、フェルドウスィーの「シャー・ナーメ」やグルガーニーの「ヴィースとラーミーン」にも影響を与えています。

ファルハードの伝説は、文学だけでなく、伝承や芸術を含むペルシア文化全体に影響を与えています。

この物語は、旧ペルシア帝国領やパキスタンなど、ペルシアの影響を受けた地域出身の多くの詩人や作家によって語り継がれてきました。また、映画や音楽の題材としても用いられています。

「ホスローとシーリーン」は、愛と悲劇、そして人間の心の葛藤を描いたペルシア文学の傑作として、今日でも多くの人々に愛され続けています。

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