ホセ・マヌエル・マルティン

ホセ・マヌエル・マルティン（José Manuel Martín, 1924年5月24日 - 2006年4月12日）は、スペイン・アビラ県カサビエハ出身の俳優です。1950年代末から映画に出演し始め、助演男優として数多くの作品でその存在感を示しました。テレビドラマにも多数出演し、時には脚本も手がけるなど、多才な一面も持っていました。

幅広い役柄を演じ分ける名優

マルティンは、ルイス・ブニュエル監督の『ビリディアナ』（1960年）での乞食役で注目を集めました。以降、娯楽作品からカルロス・サウラ監督のような芸術性の高い作品まで、幅広いジャンルの映画に出演。その演技力は高く評価され、スペイン映画界に欠かせない俳優の一人となりました。

特に、1960年代に隆盛を誇ったマカロニ・ウエスタンでは、ジョゼフ・マーティン（Joseph Martin）という変名を使って出演することもありました。悪役を演じることが多かったものの、『五匹の用心棒』（1966年）では、主要な5人のガンマンの一人として出演するなど、様々な役柄を演じ分けました。

マカロニ・ウエスタンでの活躍

1960年代初頭、イタリア映画界を中心に、スペインで西部劇が盛んに製作されました。これが「マカロニ・ウエスタン」と呼ばれるジャンルの作品群です。セルジオ・レオーネ監督の『荒野の用心棒』（1964年）の世界的なヒットをきっかけに、マカロニ・ウエスタンは量産体制に入りました。

マルティンは、マカロニ・ウエスタンの先駆けとされるイギリスとスペインの合作映画『荒野の愚連隊』（1962年）に端役で出演。その後、セルジオ・コルブッチ監督の『ミネソタ無頼』（1964年）やドゥッチオ・テッサリ監督の『夕陽の用心棒』（1965年）など、数多くのマカロニ・ウエスタンに脇役として出演しました。

また、アメリカの西部劇スター、ガイ・マディソン主演の『荒野の七人』を彷彿とさせる作品『五匹の用心棒』（1966年）では、ジョヴァンニ・チャンフリーリアやヴィダル・モリーナらと共に、主要なガンマン役を務めました。当時、ジュリアーノ・ジェンマ、フランコ・ネロ、リチャード・ハリスン、クラウス・キンスキーといったスターたちが活躍する中で、マルティンは彼らの作品を支える重要な脇役として存在感を示しました。

その後も、マルティンは特徴的な風貌を活かし、クレイグ・ヒル主演の『西部の無頼人』（1968年）では悪役の一味を演じ、ハリウッド西部劇『100挺のライフル』（1967年）では、ラクエル・ウェルチ演じるメキシコ人女性の父親役で出演するなど、多様な役柄を演じました。同時代に活躍したアルド・サンブレルと同様に、スペインロケのハリウッド映画や合作映画に欠かせない俳優として、その名を刻みました。

チャールトン・ヘストンが監督・主演を務めた『アントニーとクレオパトラ』（1972年）にも出演するなど、晩年まで精力的に活動を続けました。

主なフィルモグラフィー

『荒野の愚連隊』（1962年）
『墓標には墓標を』（1962年）
『脱走計画』（1963年）
『ミネソタ無頼』（1964年）
『夕陽の用心棒』（1964年）
『モヒカン族の最後』（1965年）
『革命児カランチョ/危機一髪』（1965年）
『南から来た用心棒』（1966年）
『さいはての用心棒』（1966年）
『さすらいの一匹狼』（1966年）
『復讐のジャンゴ/岩山の決闘』（1966年）
『地獄から来たプロガンマン』（1966年）
『キス・キス・バン・バン』（1966年）
『復讐の四ドル』（1966年）
『群盗荒野を裂く』（1966年）
『裏切りの荒野』（1967年）
『情無用のならず者』（1967年）
『西部の無頼人』（1967年）
『死の戦線ノルマンディ』（1967年）
『白昼の大列車強盗』（1967年）
『100挺のライフル』（1967年）
『アウトローガン』（1968年）
『無頼プロフェッショナル』（1971年）
『新・さすらいの用心棒/ベン&チャーリー』（1971年）
『アントニーとクレオパトラ』（1972年）
『カットスローツナイン』（1972年）

上記以外にも多数の作品に出演しており、中にはクレジットされていない作品も存在します。ホセ・マヌエル・マルティンは、その独特な存在感と確かな演技力で、スペイン映画史に名を刻んだ名優の一人と言えるでしょう。

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