ホタルブクロ

ホタルブクロ（蛍袋）

ホタルブクロ（学名: Campanula punctata var. punctata または Campanula punctata）は、キキョウ科の多年草です。初夏に特徴的な釣り鐘状の花を咲かせ、日本の各地で見ることができます。

名称の由来

和名の「ホタルブクロ」は、その名の通り、昔の子どもたちがこの花の袋状の形にホタルを入れて遊んだことに由来すると言われています。また、「火垂る袋」と書いて提灯に見立て、「チョウチンバナ」という別名もあります。他にも、花の形から「ツリガネソウ（釣鐘草）」、雨の時期に咲くことから「アメフリバナ」などの別名で呼ばれることもあります。中国植物名としては、紫斑風鈴草、燈籠花、吊鐘花などがあります。

特徴

ホタルブクロは、日本全国に分布しており、開けたやや乾燥した草原や道端、山野の林縁などでよく見られます。山間部では人里にも姿を現すことがある、身近な野生植物です。その美しい姿から、山野草として栽培されることも多くあります。

多年草であるホタルブクロは、茎が直立して50 - 70cmほどの高さに成長し、全体に細かい毛が生えています。匍匐枝を横に伸ばして増殖していくのが特徴です。暑さには弱い性質を持ちますが、日陰でもよく育ちます。

葉の形は、春に出る根生葉と、生育してから茎につく葉とで異なります。越年する根生葉には長い柄があり、葉身は披針形から卵形で、根元から群生しますが、花が咲く頃には枯れてしまいます。茎につく葉は互生し、葉身は長卵形から広披針形をしています。葉身は葉柄に沿って翼状になり、基部はしばしば茎を抱きます。どちらの葉も葉縁には鋸歯があり、全体に粗い毛が生えています。

花期は初夏から夏にかけてで、花茎を伸ばして上部に数個の釣り鐘型の花を下向きに咲かせます。釣り鐘型の花は直径2 - 2.5cm、長さは約5cmで、淡紫色から濃赤紫色をしており、花冠には粗い長毛があります。花には短い柄があり、花冠は浅く5つに裂けており、内側には濃い紫色の斑点が見られます。花の色には赤紫色のものと白色のものがあり、関東地方では赤紫色、関西地方では白色が多い傾向があります。

利用

ホタルブクロは、花、つぼみ、若苗を食用とすることができます。採取時期は、暖かい地域では3 - 4月頃、寒い地域では5月頃が適期とされています。若苗は根を残すように株ごと切り取り、初夏に咲く花やつぼみは一輪ずつ摘み取って利用します。

若苗は苦味が強いため、しっかりと茹でてから水にさらし、おひたし、和え物、煮びたし、油炒め、汁物の具などに利用します。生のまま天ぷらにすることも可能です。花やつぼみは、茹でた後に三杯酢やすまし汁に入れたり、ホワイトリカーに漬けて花酒として楽しむこともできます。

分類

ホタルブクロには、いくつかの変種が存在します。

ヤマホタルブクロ (Campanula punctata Lam. var. hondoensis (Kitam.) Ohwi):
山地に多く生育するホタルブクロの変種で、外見はホタルブクロとほとんど変わりませんが、萼片の間が盛り上がっている点が異なります。ホタルブクロは萼片の間に反り返る付属片があります。
イシダテホタルブクロ (Campanula punctata var. kurokawae):
四国石立山原産の矮性種です。

近縁種

園芸植物として広く親しまれているカンパニュラ（つりがねそう）は、ホタルブクロと同じキキョウ科の植物で、主に地中海沿岸地方原産の植物を改良したものです。

ホタルブクロは、その美しい姿と名前の由来から、日本の自然や文化を感じさせてくれる植物です。食用としても利用できる、身近な山野草として、これからも大切にされていくでしょう。

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