ホテルシップ

ホテルシップとは

ホテルシップとは、クルーズ客船を特定の港に停泊させ、宿泊施設として利用する形態を指します。主に、大規模な見本市やスポーツイベントにおいて宿泊施設が不足することが予想される際、一時的に宿泊空間を増やす手段として活用されます。このシステムは、通常のクルーズ客船としての使用に戻すことができるため、宿泊施設の供給過多を回避することができるのが大きな魅力です。また、クルーズ旅行を体験したいが長期間の休暇を取るのが難しい人々にとって、手軽な宿泊選択肢となっています。

日本におけるホテルシップの歴史

日本では、1964年の東京オリンピックがホテルシップの利用が注目されるきっかけとなりました。この際、横浜港において東洋郵船の「おりえんたるくいん」など5隻、東京港に7隻の合計12隻が入港しました。外国から訪れる観光客は、その乗船したクルーズ客船で宿泊することで、宿泊不足の問題を解消しました。

1988年には、青函トンネル開通記念の博覧会に関連して、函館港に「羊蹄丸」、青森港に「十和田丸」を停泊させ、相部屋制による宿泊を提供するという試みも行われました。このように、ホテルシップは経済的かつ柔軟な宿泊手段としての役割を果たしてきました。

1989年、横浜博覧会に際し、名だたるクルーズ客船「クイーン・エリザベス2」が横浜港で約2か月間停泊し、18万人以上の人々が宿泊しました。この期間、ホテルシップとしての機能が高く評価されました。

さらに、1995年には阪神・淡路大震災の際に、「おりえんとびいなす」や「新さくら丸」などさまざまな船が神戸や尼崎で避難者や救助隊の宿泊所として利用され、社会的な役割も果たしました。

近年の動向

近年では、災害時における宿泊施設としての役割も注目されています。例えば、2020年には防衛省向けのチャーター船「はくおう」が被災者の宿泊に利用され、新型コロナウイルスの集団感染に対応する自衛官の宿泊施設としても機能しました。

また、2020年の東京オリンピックに際しても、宿泊施設の選択肢の一環としてホテルシップの利用が検討されました。しかし、法律や規制の複雑さから、横浜港や東京港での実施は最終的に実現しませんでした。

まとめ

このように、ホテルシップは、宿泊不足を解消する新たな宿泊形態として、日本国内で多くの可能性を秘めています。これからも、特にイベントにおいて活用されるケースが増えてきており、法整備や運用整理が進むことで、より効果的に利用されることが期待されます。

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