クイーン・エリザベス2

クイーン・エリザベス2（QE2）

クイーン・エリザベス2（RMS Queen Elizabeth 2）は、キュナード・ラインが所有した20世紀後半を象徴する客船です。当初は大西洋横断航路のフラッグシップとして活躍しましたが、後にクルーズ船として世界中を航海しました。

概要

1969年に就航したQE2は、最後の大西洋定期横断航路専用客船でした。その後、クルーズ船へと転身し、2008年に引退しました。

日本語文献では「クイーン・エリザベス2世号」と表記されることもありますが、これは誤解です。船名は先代の客船「クイーン・エリザベス」の後継であることに由来し、「Queen Elizabeth 2 (Two)」が正しい表記です。ただし、1967年の進水式でエリザベス女王が「クイーン・エリザベス2世」と宣言したため、混同されることがあります。

「RMS」は「Royal Mail Ship」の略で、イギリスの郵便輸送に使用される船に与えられる栄誉ある称号です。

船歴

1960年代後半、航空機の発展により大西洋横断航路の乗客は激減し、客船の需要は低下しました。QE2は、先代の「クイーン・メリー」よりも小型化され、パナマ運河通過を考慮した設計となっています。

就航当時、QE2は世界最大の客船であり、キュナード・ラインのフラッグシップでした。サウザンプトンを母港とし、北大西洋航路を中心に運航しましたが、1970年代以降は世界一周クルーズにも従事しました。日本へは1975年に初寄港して以来、何度か訪れています。

1982年のフォークランド紛争では、イギリス海軍に徴用され輸送艦として活躍しました。兵士3,500名を収容し、戦地への上陸支援を行いました。紛争後、内外装の損傷により改修が行われました。

1987年には、蒸気タービンからディーゼル電気推進へと動力システムを大幅に刷新しました。この改修でキャビンが増設され、総トン数も7万トンを超えました。

パナマ運河通過可能な細長い船体のため、クルーズ船としては使い勝手にやや難があり、度重なる改装で船内は雑然としていました。しかし、遠洋航路時代の伝統を受け継ぎ、サービスの質は高く評価され、複数のレーティングを獲得しました。

2008年に客船としての役目を終え、ドバイで海上ホテルとして開業しました。当初は計画の遅延や中断もありましたが、2018年に「クイーン・エリザベス2ホテル」としてオープンしました。

キュナード・ラインは、QE2の後継となる「クイーン・エリザベス」を2010年に就航させました。この新「クイーン・エリザベス」は、「クイーン・メリー2」とは異なる設計で、「クイーン・ヴィクトリア」の姉妹船として建造されました。

技術面

QE2は、就航当初から世界有数の高速客船でした。蒸気タービンエンジンで最大110,000馬力を発揮していましたが、機関故障が頻発しました。1974年には漂流事故も発生しています。燃費の悪さも課題でした。

1986年から1987年にかけて、大規模な機関換装工事が行われました。ディーゼル電気推進に換装することで燃費が35％削減され、出力も向上しました。スクリューも可変ピッチ式に交換され、操船性が大幅に向上しました。しかし、グリムホイールは試験運航後に破損が発見され、取り外されました。この改修費用は約1億ポンドに達しました。

機関換装後の最初のクルーズでは、発電機の調整不良による煤煙問題が発生しましたが、その後は改善されました。

トラブル

1973年には、爆破予告と身代金要求事件が発生しました。イギリス軍特殊部隊が洋上降下で捜索を行い、犯人は後に逮捕されました。2000年には、ニューヨーク港で海上自衛隊の練習艦「かしま」と接触事故を起こしましたが、大きな被害はありませんでした。

日本における評価

日本では、QE2は「世界最大の客船」として紹介されることが多かったですが、総トン数で世界最大だったのは就航時から1980年までです。その後はより大型のクルーズ船が登場し、順位を落としました。しかし、メディアでの扱いは別格で、その存在は「豪華客船」の象徴として認識されました。このイメージが、日本における大衆クルーズの発展を妨げているという指摘もあります。

1989年には横浜博覧会に合わせてホテルシップとして横浜港に停泊し、テレビ番組のロケにも使用されました。1989年から1990年には、大手企業によるチャーターで日本近海クルーズも実施されました。2008年の最後の世界一周クルーズでは、大阪港が唯一の日本寄港地となりました。

まとめ

クイーン・エリザベス2は、その長い歴史の中で数々の役割を担い、多くの人々に愛されてきた客船です。大西洋横断航路からクルーズ船への転換、フォークランド紛争での活躍、技術革新、そして日本での特別な評価など、その生涯は波乱に満ちたものでした。現在はホテルとして新たな役割を果たしており、その歴史は今もなお語り継がれています。

ギャラリー

(画像は省略)

脚注

(脚注は省略)

外部リンク

Cunard: The Most Famous Ocean Liners in the World
Official QE2 website
QE2 Org website
Video Clips of QE2
Official Palm Jumeirah Website
Video tour of QE2 interior BBC News, 22 October 2008
Unofficial QE2 Website
Archive of QE2 material
1986 - 1987 re-engining refit
BBC coverage of QE2 Farewell
Queen Elizabeth 2 : : Home

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