ホルミズド2世

ホルミズド2世（Hormizd II, ? - 309年）は、サーサーン朝ペルシア帝国の第8代君主（シャーハーン・シャー、在位：302年 - 309年）です。先代ナルセ1世の息子で、中期ペルシア語では「オ（ー）フルマズド」と呼ばれます。これはアフラ・マズダー神を意味します。アラビア語文献では「フルムズ」、近世ペルシア語では「ホルミズド」「ホルムズド」として知られています。

7年5ヶ月という短い治世であったため、ホルミズド2世の時代については多くが謎に包まれています。

クシャーノ・サーサーン朝との関係

ホルミズド2世の時代、サーサーン朝は東方で勢力を拡大したクシャーン族への対応を迫られていました。先代のホルミズドの反乱以降、クシャーンはほぼ独立状態にあり、独自の貨幣を発行し続けていました。ホルミズド2世は王子時代にクシャーン族長の娘を妃に迎えることで関係を深めようとしました。

初期サーサーン朝の歴史は、バハラーム1世の系統とナルセの系統の対立の歴史とも言えます。オルエミスはバハラーム1世の系統に属すると考えられ、ホルミズド2世の動きは、クシャーンを力で抑え込むだけでなく、東部地方をナルセ派が掌握しようとする意図があったと解釈できます。この結果、サーサーン朝の王族が藩王として統治するクシャーノ・サーサーン朝体制が復活しました。しかし、サーサーン朝自体が不安定になると、クシャーン王たちは再び独立を志向し、サーサーン朝を揺るがす存在となります。

王子たちの運命

ホルミズド2世には、アードゥルナルセとホルミズドという二人の王子がいました。長子のアードゥルナルセは残忍な性格で、弟のホルミズドを13年間も獄中に監禁しました。ホルミズドは妻の助けを借りてビザンツ帝国のコンスタンティヌス1世のもとに亡命し、後にユリアヌス帝のペルシア遠征軍に従軍しました。彼の息子もローマのプロコンスルを務めましたが、363年にシャープール2世の時代になってようやく帰国を許されました。

アラブ遠征と暗殺

ホルミズド2世はアラブ系のガッサーン朝に対し、貢納を要求するためにシリアへ遠征し、ガッサーン王を討ち取ることに成功しました。しかし、その残党によって狩猟中に暗殺されてしまいます。死の間際、ホルミズド2世は妊娠中の妃が王子を生んだ場合、シャープールと名付けて後継者にするように遺言しました。

この王子が、後に半世紀にわたって君臨するシャープール2世です。彼は生まれる前から王冠を授けられるという、非常に稀な君主となりました。ホルミズド2世は、シャープール2世の偉大な業績の先駆けをつけた人物として評価されています。

諸王の王 - ウェイバックマシン（2006年12月15日アーカイブ分）

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