ホレス・ヘンダーソン

ホレス・ヘンダーソン（Horace Henderson）は、1904年11月22日にアメリカ合衆国ジョージア州カスバートで生まれ、1988年8月29日にその生涯を閉じた、多才なジャズミュージシャンでした。ジャズピアニスト、オルガニスト、編曲家、そしてバンドリーダーとして幅広く活躍し、特に彼の兄であるフレッチャー・ヘンダーソンは、ジャズ史において重要な人物として知られています。ホレスもまた、兄と同様にジャズ界に大きな足跡を残しました。

彼の音楽キャリアは、ウィルバーフォース大学で学んでいた時期に始まります。そこで彼は「コレジアンズ」という自身のバンドを結成しました。このバンドには、後にジャズ界で名を馳せるベニー・カーターやレックス・スチュワートといった才能あるミュージシャンが参加していました。コレジアンズは後に「ホレス・ヘンダーソン・オーケストラ」として、さらにその後には「ディキシー・ストンパーズ」と改名して活動を続けました。

その後、ホレスはサミー・スチュワートと共に仕事をするために一時バンドを離れますが、1928年には再び「コレジアンズ」という名の新たなグループを立ち上げました。このバンドは1931年にドン・レッドマンが引き継ぐことになりますが、ホレスは引き続きそのバンドのピアニストおよび編曲家として貢献しました。最終的には、彼は兄フレッチャー・ヘンダーソンのために働くことを選び、そのバンドに参加しました。

フレッチャー・ヘンダーソンの名を冠したオーケストラは、ホレスの編曲によってそのサウンドを豊かにしました。実際、フレッチャーのレパートリーには、兄自身の作品とほぼ同数に及ぶホレスのアレンジが含まれていました。ホレスは精力的に活動を展開し、自身のバンドを率いる傍ら、多くの編曲や作曲、録音を手がけました。1980年代に至るまで、彼をフレッチャーよりも才能があり、技術的に優れていると評価する声もありましたが、大衆的な人気や、ジャズ史における広範な影響力という点では、兄フレッチャーの方がより広く知られる存在となりました。

ホレス・ヘンダーソンの編曲家としての才能は、兄のバンド内に留まらず、同時代の数多くの著名なジャズおよびビッグバンドのリーダーたちにも求められました。彼がアレンジを提供したクライアントの中には、チャーリー・バーネット、カサ・ロマ・オーケストラ、トミー・ドーシー、ベニー・グッドマン、アール・ハインズ、ジミー・ランスフォードといった、そうそうたる顔ぶれが見られます。

彼の最もよく知られた編曲作品としては、自身のオリジナル曲である「Hot and Anxious」が挙げられます。この曲の一部分は、後にグレン・ミラー楽団の不朽の名曲「イン・ザ・ムード」の主要なテーマとして用いられ、広く親しまれることとなりました。また、彼が作曲者の一人でありながらクレジットを得られなかったとされる「Christopher Columbus」や、ビッグバンド時代の人気インストゥルメンタルである「Big John's Special」も、彼の重要な作品として知られています。これらの楽曲は、当時のジャズシーンにおいて重要な位置を占めるものでした。

彼のキャリアの様々な時期には、ヴォーカリストであるレナ・ホーンやビリー・ホリデイといった偉大なアーティストのピアニスト、そして音楽監督を務めるなど、幅広い活動を展開しました。ホレス・ヘンダーソンは、その生涯を通じてジャズの発展に貢献し、特に編曲家としての類稀なる才能は、多くの名演を彩る礎となったのです。

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