ホロゾア

ホロゾア（Holozoa）は、真核生物の中でも、細胞の後方に一本の鞭毛を持つという特徴を持つ「後方鞭毛生物」（オピストコンタ）に含まれる主要なグループの一つです。このグループには、私たち人間も含まれる動物界全体と、動物に非常に近い関係にある多様な単細胞生物が含まれています。

オピストコンタは、大きく分けて菌類が属する系統と、動物が属する系統の二つに分けられます。ホロゾアはまさに後者の系統に相当し、菌類よりも動物に遺伝的に近い生物全てを網羅しています。

分類上の位置づけと多様性

したがって、ホロゾアは動物そのものと、動物以外のオピストコンタのうち動物により近い生物群を一括りにしたものです。ただし、研究者によっては、動物を含めずに、動物以外の近縁な単細胞生物群を指す名称として「コアノゾア」のような言葉を好んで使用する場合もあります。これは、ホロゾアが動物を全て含んでしまうことで、動物以外の系統を独立して議論しにくい側面があるためです。

ホロゾアに含まれる単細胞生物の中で、最も古くからその動物との関連性が注目されてきたのは、襟鞭毛虫類です。襟鞭毛虫は、特徴的な「襟」（細胞の周りを囲む微絨毛の輪）とそこから伸びる一本の鞭毛を持ちます。この構造は、最も原始的な多細胞動物と考えられている海綿動物の摂食細胞である「襟細胞」と驚くほどよく似ています。この形態的な類似から、19世紀には既に海綿と襟鞭毛虫の間に関連がある可能性が指摘されていました。特に、コロニーを形成する性質を持つプロテロスポンギア（Proterospongia）属のような襟鞭毛虫は、単細胞生物から多細胞生物である海綿動物がどのように進化してきたのかを探る上で、重要なモデル生物として研究されています。

襟鞭毛虫以外のホロゾアに属する単細胞生物たちの動物との類縁関係が、分子生物学的な手法によって明確に認識されるようになったのは、比較的最近の1990年代以降のことです。例えば、イクチオスポラ類やメソミケトゾエア類と呼ばれる魚類などに寄生するグループは、まとめてメソミセトゾアという分類群として認識されるようになりました。また、アメーバ状の形態を持つミニステリア（Ministeria）やカプサスポラ（Capsaspora）は、その特徴的な糸状の仮足（偽足）に基づいて、フィラステレアと呼ばれるグループに分類されています。

このフィラステレアと、前述の襟鞭毛虫類は、動物界と非常に近縁な関係にあります。これらの三つのグループ（動物界、フィラステレア、襟鞭毛虫類）を総称して「フィロゾア」と呼ぶこともあります。

化石記録

ホロゾアに含まれる生物の化石記録を見ると、現在確認されている最も古い化石は動物のものであり、その年代は約6億年前の、いわゆるエディアカラ紀まで遡るとされています。

まとめ

以上のことから、ホロゾアという系統群は、広義には動物界全体と、それに近縁な単細胞生物群である襟鞭毛虫類、メソミセトゾア類、フィラステレア類などを含む、動物の進化を辿る上で不可欠な多様な生物たちによって構成されています。これらの生物群の研究は、単細胞から多細胞への進化、さらには動物という複雑な生命体の起源を解き明かす上で、重要な手がかりを与えています。

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