仮足

仮足とは

仮足（かそく、pseudopod）とは、真核細胞に見られる細胞質の一時的な突出のことです。仮足を持つ細胞は一般に「アメーバ様」または「アメーバ状」と形容されます。偽足、擬足、虚足とも呼ばれることがあります。

仮足の機能

仮足は、鞭毛や繊毛と並び、原生生物の主要な移動様式の一つです。仮足による運動はアメーバ運動と呼ばれ、細胞の運動方向を決定する主仮足と、それ以外の副仮足に区別されます。副仮足はさらに、長さが制限されない非限定仮足と、長さが決まっている限定仮足に分けられます。

多細胞生物においても、マクロファージやニューロンなど、多くの遊走性細胞が仮足を使って運動します。例えば、創傷治癒の過程では、成長因子の刺激を受けた繊維芽細胞が糸状仮足（フィロポディア）を出して損傷部位に移動し、増殖して傷を修復します。また、神経軸索や樹状突起の先端にある成長円錐からも、膜状仮足（ラメリポディア）や糸状仮足が出て、軸索の伸長に関わります。さらに、ガン細胞の浸潤にも膜状仮足が関与していることが知られています。

仮足は、食作用にも重要な役割を果たします。細胞が仮足を使って固形物を包み込み、細胞内に取り込む現象が食作用であり、原生生物だけでなく、多細胞生物のマクロファージなどもこの機能を利用しています。

仮足形成のメカニズム

仮足の形成と運動のメカニズムは、特に脊椎動物の細胞で詳細に研究されています。細胞膜付近でアクチンの重合が起こり、繊維状の構造が形成されます。アクチン繊維は束状になったり、互いに交差してネットワークを形成することで、仮足の骨格を構築します。この過程では、RhoファミリーのGTPaseがアクチン繊維の構築を制御しています。

アクチンの重合は細胞の推進力の源であり、活発に移動している細胞の膜状仮足は、細胞本体から切り離されても一定期間運動を継続することができます。

仮足の形態

原生生物の仮足は、その外観によっていくつかのタイプに分類されます。かつては肉質虫の分類に重要な形質と考えられていましたが、実際には系統を直接反映するものではないものの、生物群を特徴づける指標として有用です。

葉状仮足（ロボディウム）

短く、先端が丸みを帯びた指のような形状をしています。通常、顆粒を含む内質の周りを透明な外質が囲む二部構造をしています。アメーボゾアでよく見られますが、ヘテロロボサと呼ばれる群にも存在します。細胞体が前方の仮足に向かって流動するように移動しますが、基質面から持ち上げて移動することもあります。

粘液状仮足（または菌状仮足）

葉状仮足に似ていますが、より液体状です。細胞質の流れは一方向的で非常に速く、時折方向を反転させ、脈打つような動きをします。管状になった硬い外質の内部を流れ、先端近くで粘液があふれるように広がります。粘菌の変形体に見られ、基質表面を這うように移動します。

糸状仮足（フィロポディア）

基部は幅広く、先端に向かって細い糸状になります。主に外質から構成され、顆粒はほとんど見られません。リザリアに属するケルコゾアで多く見られます。基質表面に広がって移動します。

網状仮足（レティクロポディアまたは根状仮足リゾポディア）

糸状仮足に似ていますが、大きな顆粒を含み、個々の仮足が分岐・吻合して複雑な網目状の構造を作ります。主に有孔虫に見られます。これも基質表面を這うように移動します。

軸足（アクソポッドまたは有軸仮足アクソポディア）

細い針状で、微小管の束が細胞質で覆われた構造をしています。偏光顕微鏡下で強い複屈折を示す軸があることから名付けられました。放散虫と太陽虫の特徴ですが、様々な系統で何度も獲得された形質です。液中に突き出して漂いながら向きを変える程度の運動しかしませんが、物理的な接触に反応して急速に収縮するなど、捕食に役立っています。

訳語について

1980年頃までは「偽足」という訳語が一般的でしたが、それ以降は「仮足」が主流になっています。学術用語集では、動物学編と植物学編は「仮足（偽足）」、医学編は「偽足」とされており、生物教育用語集では「仮足」とされています。

参考文献

猪木正三監修　『原生動物図鑑』（ISBN 4-06-139404-5）講談社、1981年。
Bruce Alberts 他　『細胞の分子生物学』第4版（ISBN 4-315-51730-5）　中村桂子・松原謙一監訳、ニュートンプレス、2004年。

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