ホワイトマズル

ホワイトマズル：ダンシングブレーヴの血を受け継ぐ名馬

ホワイトマズルは、イギリスで生産された競走馬です。その父は、ヨーロッパ競馬史に名を刻む名馬ダンシングブレーヴ。母はロジャーズゴールドカップ（現タタソールズゴールドカップ）優勝馬のフェアオブザファーズという良血馬でした。

しかし、ダンシングブレーヴ産駒の多くが日本に輸出されていたため、ホワイトマズルのセリ落札価格は当時のレートで約700万円と、その能力を考えると意外なほど低いものでした。落札したのは、イタリアの実業家ルチアーノ・ガウチ氏。イギリスの調教師、ピーター・チャップルハイアム厩舎に預けられ、競走生活が始まりました。馬名は、鼻から口元にかけての白い流星が特徴的だったことに由来しています。

デビューは2歳9月。初戦は3着、2戦目はアイルランド2000ギニー馬となるバラシアの3着と、2歳シーズンは未勝利に終わりました。しかし3歳になると、才能が開花。未勝利ステークスを圧勝した後、4連勝でデルビーイタリアーノを制します。2分24秒5という驚異的なレコードタイムは、2008年に距離が変更されるまで破られることはありませんでした。

この活躍に目をつけたのが、社台グループの吉田照哉氏。チャップルハイアム調教師を通じて、ホワイトマズルを購入しました。吉田氏は、当時無敗で英愛ダービーを制したコマンダーインチーフと比較検討の上、総合力でホワイトマズルを高く評価したと伝えられています。

その後も勝利を重ね、キングジョージ6世&クイーンエリザベスダイヤモンドステークスでは、人気薄ながらコマンダーインチーフをハナ差抑えて2着に。凱旋門賞でも2着に入るなど、世界を舞台に活躍を見せました。一方、ジャパンカップでは13着と、ムラのある成績も目立ちました。

4歳時には、キングジョージ6世&クイーンエリザベスダイヤモンドステークスに武豊騎手を鞍上に迎えて出走。ハイペースのレース展開の中、2着に敗れましたが、武豊騎手の冷静な騎乗は、調教師や主戦騎手であるジョン・リードからも高い評価を得ました。しかし、その後フランスで行われた凱旋門賞では、6着に敗れ、武豊騎手は解雇されてしまいます。この出来事については、イギリスを中心に大きな論争が巻き起こりました。

種牡馬として

競走馬を引退後は、日本へ輸入され、社台スタリオンステーションで繋養されました。種牡馬としての活躍も大きく、イングランディーレ（天皇賞・春）、スマイルトゥモロー（優駿牝馬）、アサクサキングス（菊花賞）など、数多くのGI・JpnI競走優勝馬を輩出しました。産駒は短距離から長距離まで幅広い距離で活躍し、その脚質も様々で、追い込み型から逃げ型まで様々でした。中央サイアーランキングでも芝部門で常に上位にランクインするなど、その成功は顕著でした。

2011年にはレックススタッドに移籍し、種牡馬生活を続けましたが、高齢となったため2016年に種牡馬を引退。2017年2月26日、老衰のため27歳でその生涯を終えました。

ホワイトマズルは、競走馬としての華々しい活躍だけでなく、種牡馬としても日本の競馬界に大きな足跡を残した名馬として、これからも語り継がれていくことでしょう。

もう一度検索