ホワイト・パス・アンド・ユーコン・ルート

ホワイト・パス・アンド・ユーコン・ルート：歴史と現在

ホワイト・パス・アンド・ユーコン・ルート（WP&YR）は、アメリカ合衆国アラスカ州スカグウェイとカナダ・ユーコン準州の州都ホワイトホースを結ぶ狭軌鉄道です。この鉄道は、1890年代後半のクロンダイク・ゴールドラッシュを背景に建設され、鉱物資源の輸送と観光の両面で重要な役割を果たしてきました。他の鉄道路線とは接続がなく、孤立した存在であり、その運営は複数の会社によって行われてきました。現在はクラブリンク・エンタープライズ・リミテッドの完全子会社として運営されています。

建設の背景

1897年、クロンダイク・ゴールドラッシュの熱狂の中、金鉱を目指す探鉱者たちはスカグウェイからチルクート峠またはホワイト峠を越える危険な旅を強いられていました。カナダ当局は、探鉱者に大量の装備品を持ち込むことを要求したため、探鉱者たちは何度も峠を往復する必要がありました。この非効率な状況を改善するため、鉄道建設の必要性が高まりました。カナダ政府には32件の鉄道計画が提出されましたが、ほとんどが実現しませんでした。その中で、スカグウェイからユーコン準州フォートセルカークを結ぶ鉄道計画が具体化し、イギリスの投資家からの出資により建設が始まりました。

建設工事の開始

1898年5月、建設工事が開始されました。3フィート（914mm）の狭軌が採用されたのは、山岳地帯での建設費用を抑え、急カーブを可能にするためでした。ホワイト峠の頂上まで到達するためには、450トンもの爆発物が使用されました。工事は、地元の犯罪組織のボスであるソーピー・スミスとの対立に直面しましたが、自警団によって排除されました。1898年7月21日、スカグウェイから4マイル（6.4km）の区間が観光客向けに開通し、アラスカ州初の鉄道となりました。1899年には、スカグウェイからホワイト峠頂上、さらにベネットまで延伸されました。1900年7月29日には、最後の犬釘が打たれ、8月1日から全線が開業しました。しかし、その頃にはゴールドラッシュは終焉を迎えていました。

ゴールドラッシュ後の運営

ゴールドラッシュが終息した後、この鉄道は銅、銀、鉛などの鉱物輸送に重点を置くようになりました。スカグウェイは主要な港であり、ホワイト・パス・アンド・ユーコン・ルートは、ユーコン準州への唯一の輸送路としての役割を果たしました。鉄道は鉱石輸送だけでなく、旅客やその他の貨物も輸送しました。また、ホワイトホースからカーマックスへの延長計画もありましたが、代わりに河川の船舶を買収し、ホワイトホースとドーソンシティ間の安定した輸送を確保しました。1901年には、タク軌道という連水鉄道も建設され、湖上輸送と連携していました。

1910年には、ホワイトホース近郊のプエブロまで支線が開通しましたが、1918年に廃止されました。世界恐慌時には輸送量が激減し、週に1本の運行にまで縮小しましたが、ホワイト・パス・アンド・ユーコン・ルートは、ユーコン地域の他の鉄道が廃止される中で生き残りました。

第二次世界大戦中の貢献

第二次世界大戦中、アラスカ州が戦略的に重要な場所になると、アメリカ陸軍はこの鉄道の管理を始め、多くの蒸気機関車を導入しました。特に、マッカーサー型機関車は有名で、イラン向けではなく、当初から3フィート軌間用として製造されたものです。ホワイト・パス・アンド・ユーコン・ルートは、アラスカ・ハイウェイ建設のための物資輸送の重要な役割を果たし、記録的な輸送量を達成しました。

戦後の変遷と一時的な閉鎖

1951年、新しい持ち株会社が設立され、ホワイト・パス・アンド・ユーコン・ルートは財務的に再構築されました。1950年代にはディーゼル化が進み、インターモーダル輸送の先駆者としてコンテナ輸送を開始しました。1969年には、ファロ鉱山の開発に伴い、輸送能力を大幅に増強しました。しかし、1982年に金属価格が下落し、鉱山が閉山となり、ホワイト・パス・アンド・ユーコン・ルートは商業鉄道としての活動を終え、一時的に廃止となりました。

観光鉄道としての復活

1980年代後半、アラスカへの観光客が増加し、ホワイト・パス・アンド・ユーコン・ルートは観光鉄道として復活しました。1988年には、スカグウェイとホワイトパス間で運行を再開し、その後、フレーザー、ベネット、カークロスへと路線を延伸しました。現在では、スカグウェイからカークロスまでの区間が観光客向けに運行されています。特別客車や蒸気機関車も使用され、その歴史的な魅力を伝えています。ホワイトホースまでの全線再開も計画されています。

近年の出来事と展望

2006年の報告書では、カーマックスをハブとして、ホワイトホースやスカグウェイ、ヘインズへの支線延伸が提案されました。また、過去に使用された蒸気機関車のいくつかは、アメリカ合衆国南東部で観光客向けに運行されています。スカグウェイ当局と鉄道会社は、貨物輸送の再開も視野に入れており、鉱業の活性化に貢献する可能性もあります。

事故と安全

この鉄道は、過去にいくつかの事故も経験しています。1951年には機関車が転覆し、1994年には石油パイプラインの破損事故が発生しました。2006年には、保線作業員が死亡する脱線事故も発生しています。これらの事故を踏まえ、安全対策が重要視されています。

まとめ

ホワイト・パス・アンド・ユーコン・ルートは、ゴールドラッシュの歴史と、その後の産業の発展を支えた重要な鉄道です。現在は、その歴史的な魅力を生かした観光鉄道として、多くの人々に親しまれています。貨物輸送の再開も視野に入れた今後の展開が期待されています。

もう一度検索