ホワイト・ベア・シアター

ホワイト・ベア・シアター：ロンドンのパブ劇場から発信される演劇の灯

ロンドンのケニントン地区にあるホワイト・ベア・シアターは、1988年、ホワイト・ベア・パブを改修して誕生しました。50席ほどの小さな劇場ながら、その存在感は大きく、ロンドンを代表するパブシアターとして長きにわたり愛されています。芸術監督を務めるのは、創設者でもあるマイケル・キングズベリ氏です。

同劇場は、現代の新しい戯曲の上演と、忘れ去られた過去の戯曲を現代に蘇らせるという二つの柱を掲げて活動しています。特に、後者である「ロスト・クラシックス・プロジェクト」は、ホワイト・ベア・シアターの大きな特徴であり、高い評価を受けています。

ロスト・クラシックス・プロジェクト：眠れる名作の目覚め

ロスト・クラシックス・プロジェクトは、長らく上演されてこなかった戯曲を掘り起こし、現代の観客に届けることを目的としています。そのレパートリーは多岐に渡り、王政復古期の演劇、ヴィクトリア朝の笑劇、スペイン黄金世紀の演劇など、時代や国境を越えた作品が上演されてきました。しかし、特に力を入れているのは近世イングランド演劇です。

シェイクスピアズ・グローブ座の「Read Not Dead」シリーズや、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの「ジャコベアン・シーズン」と並ぶ、シェイクスピア以外の近世劇を網羅した取り組みとして高く評価されており、21世紀における近世演劇の再構築に大きく貢献していると言えるでしょう。

このプロジェクトを通じて、トマス・デッカーとジョン・ウェブスターの共作『西行きだよーお！』や、ベン・ジョンソンの晩年の作品『The Magnetic Lady』など、現代において初めて上演される作品も数多く誕生しました。2015年には、シェイクスピアとフレッチャーの合作『二人の貴公子』も上演されています。さらに、ジョン・オズボーンの初期作品で、これまで失われたと考えられていた『Personal Enemy』と『The Devil Inside Him』も同劇場で上演されました。

これらの取り組みは、単に過去の作品を上演するだけでなく、現代社会においてもその作品が持つ普遍的なテーマや魅力を再発見し、新たな解釈を加えることで、観客に新鮮な感動を与えています。

ホワイト・ベア・シアターの功績と未来

ホワイト・ベア・シアターは、その活動の多様性と質の高さが評価され、数々の賞を受賞しています。2001年にはTime Out誌の「ベスト・フリンジ・ヴェニュー」を受賞し、2012年にはEmpty Space Peter Brook AwardsのMark Marvin Rent Subsidy Awardを受賞しています。

小さなパブを拠点とする劇場ながら、50席という限られた空間の中で、質の高い演劇を創造し続けているホワイト・ベア・シアター。その活動は、これからも演劇界に大きな影響を与え続けることでしょう。これからも、忘れられた名作の発掘と、現代演劇の創造という二つの柱を軸に、活気あふれる活動を続けることが期待されます。

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