ホワッツ・ゴーイン・オン (曲)

マーヴィン・ゲイ「ホワッツ・ゴーイン・オン」：時代を超えたメッセージソング

「ホワッツ・ゴーイン・オン」（What's Going On）は、マーヴィン・ゲイが1971年に発表した楽曲であり、彼の音楽キャリアにおける重要な作品の一つです。反戦、環境問題、貧困など、社会に対するメッセージが込められており、今日においても多くの人々に影響を与え続けています。

制作の背景

この曲は、マーヴィン・ゲイ、アル・クリーヴランド、レナルド・ベンソンの3名によって作詞・作曲されました。フォー・トップスのメンバーだったベンソンが、サンフランシスコで反戦運動のデモ隊と警官隊の衝突を目撃したことが、歌詞の原点となっています。当初はタイトルが決まっていませんでしたが、ゲイが曲を聴き、タイトルを考案し、歌詞を追加、メロディを装飾することで完成しました。ゲイは当時、社会情勢やベトナム戦争に出征していた弟からの手紙に強い影響を受けていたと語っています。

レコーディングには、デトロイト・ライオンズのアメリカンフットボール選手、メル・ファーとレム・バーニーもバックコーラスとして参加しています。

リリースを巡るドラマ

レコーディング後、モータウンの社長ベリー・ゴーディは、この曲のリリースに難色を示しました。当時、エドウィン・スターの「黒い戦争」やテンプテーションズの「ボールズ・オブ・コンフュージョン」といった政治的な曲のリリースを許可していたにも関わらず、「ホワッツ・ゴーイン・オン」を嫌った理由について、ハリー・バークは「サウンドが古臭く、ディジー・ガレスピー風のスキャットが嫌いだった」と述べています。しかし、スティーヴィー・ワンダーはこの曲を擁護し、バークがゴーディの目を盗んでシングルをリリースしたことで、世に出ることになりました。

大ヒットと社会的影響

リリースされると、初回プレス盤10万枚はすぐに完売。ゴーディも考えを改め、再プレスを指示しました。Billboard Hot 100で2位、R&Bシングル・チャートで5週にわたり1位を獲得し、モータウン史上最速の売り上げを記録しました。

高い評価

「ローリング・ストーンの選ぶオールタイム・グレイテスト・ソング500」では、アフリカ系アメリカ人のミュージシャンの曲として最高の4位にランクイン。イギリスの雑誌『ニュー・ステイツマン』が2010年に選出した「トップ20ポリティカル・ソングス」では15位に選ばれました。

他メディアでの使用

映画『ジェイコブス・ラダー』、『ガール・ネクスト・ドア』、『オーシャンズ12』、『フライト』などのサウンドトラックで使用された他、日本では三菱・ディアマンテ（2代目）のCM曲としても使用されました。

数々のカバーバージョン

「ホワッツ・ゴーイン・オン」は、数多くのアーティストによってカバーされています。

シンディ・ローパー：アルバム『トゥルー・カラーズ』（1986年）でカバー。シングルとしてもリリースされ、Billboard Hot 100で12位を記録しました。
オールスター・トリビュート：U2のボノが提案したエイズ研究と被害者救済のためのチャリティ・シングルとして、多くのアーティストが参加。アメリカ同時多発テロ事件後には、テロ被害支援も目的としたプロジェクトに変更されました。

その他、ハービー・マン、クインシー・ジョーンズ、ローランド・カーク、ダニー・ハサウェイ、オフコース、ウェザー・リポート、山下達郎など、ジャンルを超えた多くのアーティストがこの曲をカバーしています。

「ホワッツ・ゴーイン・オン」は、音楽史に残る名曲であるとともに、社会に対するメッセージを発信し続ける、時代を超えた普遍的な価値を持つ作品と言えるでしょう。

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