ホワッツ・ニュー (リンダ・ロンシュタットのアルバム)

ホワッツ・ニュー (What's New)

1983年、アメリカのシンガーソングライターであるリンダ・ロンシュタットは、それまでのロック路線から一転し、伝統的なポピュラー音楽の楽曲を集めたアルバム『ホワッツ・ニュー』(What's New)を発表しました。これは、著名なバンドリーダーであり編曲家でもあるネルソン・リドルとの共同制作による三部作の第一弾にあたります。これらの三作品のカバーアートは全て、ジョン・コッシュが担当しました。

本作は、当時ロック分野で主要な女性ボーカリストと見なされていたロンシュタットにとって、キャリア上の大きな転換点となりました。この方向転換は、所属レコード会社やマネージャーであるピーター・アッシャーの当初の懸念をよそに、ロンシュタット自身の強い意志によって実現しました。彼女はこの作品を通じて、かつてフランク・シナトラ、エラ・フィッツジェラルド、トニー・ベネットといった偉大な歌手たちによって歌われた「芸術表現の小さな宝石」ともいうべき名曲群を、それまでこれらのジャンルに馴染みのなかった新しい世代に広く紹介し、かつては一部でしか聴かれなくなっていた楽曲たちを「エレベーターの中で余生を送る状態」から救い出したと後に語っています。アルバムからのシングル「クラッシュ・オン・ユー」は、アルバムリリース以前からロンシュタットのレパートリーとして親しまれており、1980年にはテレビ番組『マペット・ショー』でも披露されています。

[1983年]]9月のリリース後、『ホワッツ・ニュー』は商業的にも大きな成功を収めました。ビルボードの総合アルバム・チャートには実に81週にわたり留まるロングヒットとなり、当時チャートのトップを独占していたマイケル・ジャクソンの『スリラー』やライオネル・リッチーの『オール・ナイト・ロング』といった大ヒット作に続いて最高位3位を記録し、5週間にわたりその順位を維持しました。また、ジャズ・アルバム・チャートでも最高位2位となりました。全米で300万枚を超える売り上げでアメリカレコード協会]によりトリプル・プラチナに認定され、全世界では500万枚以上を売り上げています。この成功により、ロンシュタットは[[第26回グラミー賞の最優秀女性ポップ・ヴォーカル賞にノミネートされ、授賞式ではパフォーマンスも披露しています。シングルとしてはタイトル曲「ホワッツ・ニュー」や「クラッシュ・オン・ユー」がリリースされ、いずれもアダルト・コンテンポラリー系ラジオで人気を博しました。特にタイトル曲はビルボード・ホット100チャートでトップ50圏内に入っています。なお、1986年にはアサイラム・レコードからリリースされた編集盤『'Round Midnight』に、本作の全収録曲が収められています。

音楽評論家のスティーヴン・ホールデンは、『ニューヨーク・タイムズ』紙上で本作の大衆文化における意義を強調しています。ホールデンによれば、『ホワッツ・ニュー』はロック歌手がポップの黄金時代に敬意を表した最初の作品ではありませんが、1960年代半ば以降のロックの台頭の中で顧みられがちだったポップの理念を「最も真剣に再生させようとした試み」であると評価しました。彼は、それ以前にも多くのスタンダード曲集は存在したものの、多くが廃盤となっている現状に対し、本作が新たな価値を示した点を指摘しています。

アルバム制作には、ネルソン・リドルによる見事な編曲と指揮のもと、ドン・グロルニック（ピアノ）、レイ・ブラウン（ベース）、ジョン・ゲラン（ドラムス）といった一流のミュージシャンたちが参加しました。プロデューサーはピーター・アッシャー、エンジニアはジョージ・マッセンバーグが担当し、音質面でも高い評価を得ています。LP盤にはA面に5曲、B面に4曲が収録されています。

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