ドン・グロルニック

ドン・グロルニック

ドン・グロルニック（Don Grolnick、1947年9月23日 - 1996年6月1日）は、ジャズを深い素養としつつ、ジャンルを超えた幅広い活躍を見せたアメリカのピアニスト、作曲家、音楽プロデューサーです。わずか48年の生涯に、彼は数多くの歴史的作品に関わり、その洗練されたプレイで音楽シーンに大きな影響を与えました。

ブルックリンに生まれ、レヴィットタウンで育ったグロルニックは、アコーディオンから音楽を始め、後にピアノへ転向しました。ジャズへの情熱は幼少期に芽生え、父親に連れられて観たカウント・ベイシーやエロル・ガーナーらのコンサートが、彼をジャズへと導きました。タフツ大学では哲学を専攻しています。

大学卒業後、彼はギタリストのケン・メルヴィルらと共に、ジャズ・ロック・バンドのファイアー＆アイス（Fire & Ice）を結成。ボストンのクラブで演奏する中で経験を積み、作曲も開始しました。この初期の多様な経験が、その後のジャンルを横断する活動の基盤となります。1969年にはニューヨークへ移り、フュージョン・バンド「D」に参加しました。

1970年代は、彼が主要なグループで才能を発揮した時期です。1971年にはスーパーグループ、ドリームスの一員に。そして、ブレッカー兄弟率いるブレッカー・ブラザーズには結成メンバーとして参加し、1980年のアルバム『デタント』までバンドを支えました。この活動は彼を有名にし、その後も彼はマイケル・ブレッカーと共にステップス・アヘッドでも重要な役割を果たしました。

グロルニックのキャリアを最も特徴づけるのは、圧巻のセッションワークです。ジャズやフュージョンはもとより、ロック、ポップス、R&B、AORなど、多岐にわたるジャンルの数多くの著名アーティストのレコーディングに参加し、アルバムに彩りを添えました。リンダ・ロンシュタット、デイヴィッド・サンボーン、スティーリー・ダン、ジェームス・テイラー、ボズ・スキャッグスといったトップアーティストから、日本の主要ミュージシャンまで、彼のピアノやキーボードのプレイは広く聴くことができます。単なるサポートにとどまらず、各作品に深く寄り添い、重要な貢献を果たしており、プロデューサーとしての顔も持ち合わせていました。

自身の音楽的世界観を表現するため、ドン・グロルニックはリーダーアルバムも複数発表しています。1986年の『ハーツ・アンド・ナンバーズ』、1990年の『スーパーセッション』など、自身の名を冠した作品でその洗練された才能を示しました。

ドン・グロルニックは、1996年6月1日、非ホジキンリンパ腫のため、48歳という早すぎる年齢でこの世を去りました。ジャズを基盤としつつ、ジャンルの垣根を軽やかに越え、数多くのアーティストや作品に多大な貢献を果たした彼の功績は計り知れません。彼が残した多才で質の高い音楽性は、今なお多くのリスナーに聴き継がれており、音楽史において重要な位置を占めています。

もう一度検索