ホンシャクナゲ

ホンシャクナゲ（本石楠花）

ホンシャクナゲ（学名: Rhododendron japonoheptamerum var. hondoense）は、ツツジ科ツツジ属シャクナゲ亜属に分類される常緑低木です。ツクシシャクナゲの変種とされ、深山に自生します。別名としてシャクナゲ、オオバシャクナゲとも呼ばれます。

分布と生育環境

ホンシャクナゲは日本固有種であり、本州では新潟県西部以西、四国では四国山地に分布しています。深山の岩場や尾根筋などの厳しい環境に生育するのが特徴です。

特に、岐阜県大垣市の「一之瀬のホンシャクナゲ群落」と滋賀県蒲生郡日野町の「鎌掛谷ホンシャクナゲ群落」は、国の天然記念物として指定されており、貴重な群生地として保護されています。

形態・生態

ホンシャクナゲは樹高1〜5mに成長し、大きいものでは幹の直径が10〜15cmに達します。幹は直立しますが、根元から曲がることもあります。株立ち状になることもあります。樹皮は灰白色で、古くなると不規則に剥がれます。若い枝は緑色で、灰白色の毛が密生しています。

葉は互生し、革質で厚く、枝先に集まってつきます。葉柄は1〜2.5cmです。葉身は長さ8〜18cm、幅1.5〜5cmの長楕円形で、先端は尖っています。葉の表面は無毛で光沢があり、裏面には銀白色または淡褐色の軟毛が薄く生えています。基本種のツクシシャクナゲとは異なり、葉の裏面は赤褐色のビロード状の毛が密生することはありません。

花期は4〜6月で、枝先に短い総状[[花序]]をつけ、多数の花を横向きに咲かせます。花柄は2〜3cmで、褐色の毛が生えています。花冠は紅紫色から淡紅紫色で、まれに白色の花も見られます。花冠は直径約5cmの漏斗形で、通常は7裂しますが、まれに8裂することもあります。雄蕊は通常14本で、まれに16本です。花糸の下部には短毛が密生しています。花柱は無毛で、子房には短毛が密生しています。

果実は蒴果で、長さ1〜5cmの円柱形をしており、褐色の毛で覆われています。

花芽は枝先に形成され、広楕円形で多数の芽鱗に包まれています。最初は総苞に覆われており、この大きな花芽から美しい花が開きます。葉芽は花芽の下や葉の付け根に形成され、小さいです。葉痕は心形または半円形で、維管束痕は5〜7個あります。

下位分類

ホンシャクナゲには、以下の下位分類が知られています。

シロバナホンシャクナゲ (Rhododendron japonoheptamerum Kitam. var. hondoense (Nakai) Kitam. f. leucanthum (Nakai) T.Yamaz.)

参考文献

鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽：四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社、2014年
茂木透 写真、高橋秀男・勝山輝男 監修『樹に咲く花：合弁花・単子葉・裸子植物』山と溪谷社、2001年
牧野富太郎 原著、大橋広好・邑田仁・岩槻邦男 編『新牧野日本植物圖鑑』北隆館、2008年

天然記念物

一之瀬のホンシャクナゲ群落（岐阜県）
鎌掛谷ホンシャクナゲ群落（滋賀県）

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