ホンダ・ベンリィ

本田技研工業のオートバイシリーズ「ベンリィ」：歴史とモデル詳細

「ベンリィ（Benly）」とは、本田技研工業が製造・販売するオートバイの商標名です。その歴史は長く、大きく分けて2つのカテゴリーに分類されます。1つ目は、1953年のJ型から始まる、主に150cc以下の小排気量車に付けられたシリーズ名。もう1つは、2011年に発売されたスクーターの車名です。本記事では、それぞれの歴史とモデルについて詳しく解説します。

コンセプトと名称の由来

「ベンリィ」という名前は、「手軽に扱え、自転車より便利」というコンセプトから名付けられました。シリーズ名の最後の「ィ」は、当初は「イ」と大文字で表記されていましたが、1990年頃から小文字に変更されています。

歴史とシリーズ分類

1953年、ドリームE型やカブF型に続く車種としてJ型が発売され、「ベンリィ」の名前が誕生しました。当初はJ型の車名でしたが、モデルチェンジや派生モデルの増加に伴い、シリーズ名へと発展していきました。

1950年代後半には、排気量によるシリーズ分類が確立されました。50ccクラスは「カブ」、51cc～125ccクラスが「ベンリイ」、126cc～200ccクラスが「ホンダ」、200cc以上が「ドリーム」という具合です。しかし、「ホンダ」はメーカー名と重複するため、1960年代以降は分類が変更され、「カブ」「ベンリイ」「ドリーム」の3シリーズ体制となりました。

1970年代半ば以降は、大規模なモデルチェンジやモデル廃止により、シリーズ名としての使用は縮小。2008年まではCDシリーズとその派生モデルのペットネーム的な位置づけでしたが、2011年からはスクーターの車名として新たな歴史を刻んでいます。

主要モデル一覧

以下、主要なベンリィシリーズのモデルを、スクーターを除き「ベンリィ」のペットネームが付いたものとして紹介します。

ベンリィJ型 (1953年)

89cc空冷4ストロークOHV単気筒エンジンを搭載。特徴的なシーソー式リヤクッションを採用し、振動低減とチェーンへの負担軽減を実現しました。しかし、油温上昇やフレームへの負荷といったデメリットもありました。その後、JA型、JB型、JC56型とモデルチェンジを繰り返し、JC56型では従来のシーソー式リヤクッションから通常のスイングアーム式に変更されました。

ベンリィCシリーズ

実用車として位置づけられ、後のCDシリーズの基礎を築いたモデル群です。

ベンリィC90 (1958年)

世界初の量産型125cc空冷4ストロークSOHC直列2気筒エンジンを搭載。115km/hの最高速度を記録しました。このエンジンは、ワークスマシンRC90にも搭載され、全日本クラブマンレースで優勝を果たしました。

ベンリィC92 (1959年)

C90の騒音対策としてクランクケースやクランクシャフトを変更、セルスターターを搭載したモデル。北米輸出仕様のCA92など、様々な派生モデルが存在します。

ベンリィC200 (1964年)

90ccクラスながら、スポーツ性も考慮された実用車。特徴的なデザインと、高出力エンジン、4速クロスレシオトランスミッションなどを備えていました。

ベンリィCBシリーズ

4ストロークエンジン搭載のロードスポーツ車に付与されるシリーズ名で、150cc以下のモデルには「ベンリィ」の名称も付与されました。

ベンリィCB92 (1959年)

C92をベースに、高回転高出力型にチューニングされたスーパースポーツモデル。最高出力15psを誇りました。

ベンリィCB125T (1966年)

高速道路走行に対応するため、排気量を135ccに拡大したCB135も登場しました。

ベンリィCDシリーズ

Cシリーズをベースとした実用車シリーズ。アップハンドル、シングルシート、大型リヤキャリアなどが特徴です。50cc、65cc、70cc、90cc、125ccなどのモデルが展開されました。

ベンリィCD50

ベンリィシリーズの中でも最長の販売期間を誇ります。長期間にわたって改良が加えられ、多くのマイナーチェンジが実施されました。

ベンリィCD125 (1966年)

C92をベースとしたフルモデルチェンジ車。扱いやすさを重視した360°クランクの2気筒エンジンを搭載していました。

ベンリィCLシリーズ

CBやカブをベースに、センターアップマフラーやブロックタイヤを装着したスクランブラータイプです。

ベンリィCSシリーズ

CシリーズとCBシリーズの中間を埋めるスポーツモデル。アップマフラーが特徴です。

ベンリィSシリーズ (1996年)

レトロブームを受けて発売されたモデルで、CD50/CD90をベースに1960～70年代のスポーツ車風デザインを採用しました。

ベンリィSS50 (1967年)

50ccクラス初の5段マニュアルトランスミッション搭載車。高回転型エンジンと、前後17インチホイールなどを備えていました。

ベンリィSLシリーズ

CLシリーズの後継となるデュアルパーパスモデル。オフロードでの走破性を重視した設計がなされました。

ベンリィスクーター (2011年)

業務用をターゲットとしたスクーター。新聞配達や宅配用途に最適化されており、大型キャリアや低床フラットリヤスペースなどを備えています。50ccと110ccモデルが用意されました。2019年には電動モデルのベンリィe:シリーズも登場しました。

まとめ

「ベンリィ」は、長年にわたって進化を続け、時代のニーズに合わせて様々なモデルが展開されてきました。実用性を重視したモデルから、スポーツ性を追求したモデルまで、幅広いラインナップは、日本のオートバイ史において重要な役割を果たしてきたといえるでしょう。 そして、現在も電動モデルを含む様々なモデルが販売されており、その歴史はこれからも続いていきます。

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