ホンダ・CBR1100XXスーパーブラックバード

CBR1100XXスーパーブラックバード：世界最速を目指した伝説のバイク

概要

ホンダが1996年に発売したCBR1100XXスーパーブラックバードは、同社のCBRシリーズにおけるフラッグシップモデルとして君臨した名車です。1,137ccの水冷4気筒DOHCエンジンを搭載し、開発目標に「世界最速」を掲げた、当時の技術の粋を集めたマシンでした。愛称は「ブラバ」で親しまれ、その高い性能と独特のデザインは、多くのライダーを魅了しました。

開発秘話：世界最速への挑戦

開発責任者である山中勲氏率いるチームは、「世界最速のオートバイ」という目標を掲げ、開発を進めました。その開発目標は、単なる最高速度だけでなく、あらゆる面で最高の性能を目指したものでした。アメリカ空軍の超音速偵察機SR-71「ブラックバード」からインスピレーションを得たネーミングも、その野心的な姿勢を表しています。

開発過程では、「CBR1000Fの改良」「軽量化」「楕円ピストンエンジンの採用」といった複数のプランが検討されましたが、最終的には「新しいスポーツバイクを造る」という発想に転換。快適性やハンドリングも重視した設計となりました。

開発目標「フューチャー10」

開発チームは、「絶対的な動力性能」「機動力の高いハンドリング」「優れた居住性」という3つの主要なテーマを設定し、さらに具体的な10項目の開発目標「フューチャー10」を掲げました。これは、外観デザインから細部の造り込み、加速性能、ハンドリング、高速安定性、制動性能、振動性能、二人乗り快適性、夜間走行性能、そして世界最速という、多岐にわたる項目を含んでいました。

これらの目標達成のため、徹底的な空力設計、高性能エンジン、そして前後連動ブレーキシステム「D-CBS」などの先進技術が投入されました。

モデルバリエーション

CBR1100XXは、大きく分けて3つのモデルが存在します。

1型（1996年）： キャブレターモデル。最高出力164PSを達成し、量産キャブレター車としては世界最速を記録しました。独特のピックアップスタイルヘッドライトを採用し、空力性能を重視したデザインが特徴です。
2型（1999年）： インジェクション（PGM-Fi）モデル。ラムエアシステムの採用や電子制御燃料噴射システムの導入などにより、性能向上と扱いやすさの両立が図られました。
* 3型（2001年）： EURO2規制対応モデル。排出ガス浄化装置の追加などにより環境性能が向上。デジタルメーターパネルやウインドシールドの高さを変更するなど、よりツアラーとしての性格を強めました。また、このモデルから日本国内でも販売されました。

各モデルにおいて、細部仕様やカラーバリエーションに違いがあります。特に、国内モデルは馬力自主規制のために出力が100PSに抑えられ、スピードリミッターが装着されていました。

ライバル車と比較

CBR1100XXは、カワサキZZR1100を直接のライバルとして、その欠点を克服する形で開発されました。一方、後発のスズキGSX1300Rハヤブサなどについては、開発者である山中氏自身も「特に対抗意識は持たなかった」と語っています。

生産終了とその後

2008年、EURO3規制への対応や、世界的な排出ガス規制強化に伴い、CBR1100XXの生産は終了しました。しかし、その高い性能と個性的なデザインは、多くのライダーの記憶に残り続けています。現在でも、中古市場で高い人気を誇るモデルです。

維持に関する注意点

特に逆輸入車であるCBR1100XXは、高圧縮比エンジンを搭載しているため、日本のレギュラーガソリンを使用するとノッキングが発生しやすく、エンジンに深刻なダメージを与える可能性があります。必ず、メーカー指定のオクタン価91以上の無鉛ガソリンを使用する必要があります。

まとめ

CBR1100XXスーパーブラックバードは、世界最速を目指した開発思想、革新的な技術、そして美しいデザインが融合した、ホンダの技術力の結晶と言えるモデルです。その歴史と魅力を理解することで、さらにこのバイクへの愛着を深めることができるでしょう。

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