ホンダ・RA300

ホンダ・RA300: F1史に刻まれた名車

ホンダ・RA300は、1967年のF1世界選手権用にホンダが開発したフォーミュラ1カーです。この車両は、1967年のシーズン途中から1968年の初めまで使用され、その特異な設計とパフォーマンスから特に注目されています。また、RA300はイギリスのローラ・カーズとの共同開発により製作され、ローラ側ではローラ・T130とも呼ばれていました。

開発の背景

ホンダは1966年にRA273を開発し、1967年シーズンも同モデルを使用していましたが、その重量超過が課題となり、良好な成績を収めることができませんでした。この現状を打破するため、ホンダは新車を開発し、その投入を決意しました。

イギリスのローラとの提携が選ばれ、その過程でエリック・ブロードレイによるシャシー設計が行われました。インディカーで使用されていたローラ・T90をベースにしたRA300は、ホンダのV12エンジンを搭載するという形で日英の技術協力を象徴しています。この共同作業は1967年のシーズン半ばに始まり、わずか6週間で実戦投入されるというスピード感あふれるものでした。

ブロードレイの設計によって、RA300はRA273よりも軽量でハンドリングが優れた車両となりました。シャシー単体の軽量化に成功し、1090ターンから680キロまでの大幅な軽量化を実現しましたが、当時のレギュレーション上の最低重量500kgを依然として超えてしまっていました。このため、RA300はライバルに対してハンデを背負いながらの参戦となりました。

レース成績

RA300のデビュー戦は1967年のイタリアグランプリでした。このレースではドライバーのジョン・サーティースが優勝し、RA300の能力を証明しました。最終ラップに入り、サーティースは競合車両のジム・クラークのロータスやジャック・ブラバムのブラバムを追い抜きました。クラークは燃料切れに直面し、ブラバムはコースを外れたため、サーティースがゴールに最初に到達しました。しかし、この優勝はRA300にとって唯一のものとなり、以降のレースではメキシコの最終戦で4位に入っただけでした。

1968年にはRA301が登場しましたが、サーティースの成績は振るわず、12戦中4回の完走に留まりました。RA300はその後のレースで未勝利を記録し、競争力の面では課題を抱えたままでした。

エンジンの特徴

RA300に搭載されたのは、48バルブのV型12気筒エンジン、RA273Eです。このエンジンは、1966年のイタリアグランプリで初めて使用され、その際は400-440馬力が目標とされました。シリンダーの排気量は2,993.17ccで、最高回転数は12,000rpmに達しました。RA300での出力は396馬力を誇り、トルクとレスポンスも大幅に改善されました。

現在の保存状況

現在、ホンダ・RA300の14号車はツインリンクもてぎ内にあるホンダコレクションホールに保存されており、時折イベントで走行する姿も見ることができます。RA300はF1の歴史に名を残した名車であり、その開発や成績はホンダの挑戦の象徴とも言えるでしょう。

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