ホンダ・VTR

ホンダVTRシリーズ：ロングセラーロードスポーツの系譜

ホンダVTRは、1998年から2017年まで製造された250ccクラスのロードスポーツモデルです。MC08型VT250FをルーツとするVTRシリーズの5代目にあたるMC33型を皮切りに、幾度ものモデルチェンジを経て、長きに渡り愛され続けました。その歴史と魅力を、各モデルの詳細とともに紐解いていきます。

MC33型 (1998年)：Vツインロードスポーツの復活

1991年発売のゼルビス(MC25)からのフルモデルチェンジとして登場したMC33型は、扱いやすさと走りの楽しさを両立した開発コンセプトに基づいて設計されました。

デザインと車体: 従来のダブルクレードル型フレームから、軽量で剛性の高いスチールパイプによるダイヤモンド型フレームへと変更。ネイキッドスタイルを採用し、全長2040mm、全幅720mm、全高1050mm、ホイールベース1410mmというコンパクトな車体に、13Lの燃料タンクを搭載。シート高は780mmに設定されました。

エンジン: 1986年発売のVT250シリーズ(MC15型)から受け継いだ249cc水冷4ストロークDOHC4バルブ90°V型2気筒エンジン(MC15E型)は、低中速トルクの向上を目指して改良が加えられました。シリンダーヘッド、インテークポート形状、カムシャフトの変更、不等長エアファンネルの採用により、最高出力32ps/10,500rpm、最大トルク2.4kg-m/8,500rpmというスペックを実現。トランスミッションは6速から5速に変更されました。

足回り: フロントサスペンションには41mm径正立テレスコピックフォーク、リヤサスペンションには40mm径モノショックを採用。ピボットレス構造のスイングアームが特徴です。キャスター角25°30´、トレール量98mm、タイヤサイズは前輪110/70-17、後輪140/70-17。ブレーキは前後シングルディスク式で、ローター径は前輪296mm、後輪220mm。乾燥重量は139kgと、取り回しやすさを重視した軽量設計でした。

発売と販売: 1997年の東京モーターショーで参考出品された後、1998年1月に発売。フォースシルバーメタリック、イタリアンレッド、ブラックの3色のボディカラーが用意されました。年間販売目標は6000台でした。しかし、1999年8月には平成10年排出ガス規制への適合が間に合わず生産終了となりました。

BA-MC33型 (2000年)：排出ガス規制対応とマイナーチェンジ

平成10年排出ガス規制に適合するため、エキゾーストエアインジェクションシステムを搭載。型式名にBA-が追加されました。乾燥重量は140kgに増加。ハンドル、メーターパネル、プラグケーブル、リヤサスペンションスプリングの色など、細部の変更が加えられました。カラーオーダーシステムも導入されました。

JBK-MC33型 (2009年)：フルモデルチェンジとPGM-FI化

平成18年排出ガス規制に適合したフルモデルチェンジモデル。最大の変更点は、キャブレターからPGM-FI電子式燃料噴射装置への変更です。これにより、最高出力は30ps/10,500rpm、最大トルクは2.2kg-m/8,500rpmとなりました。フレームは基本設計を継承しつつも剛性見直し、シート形状変更、小物入れ新設など、細部の改良が施されています。STYLE IとSTYLE IIの2つのグレードが設定され、様々なカラーバリエーションが用意されました。

その後のモデルチェンジと生産終了

2009年以降も、VTRはマイナーチェンジを繰り返し、VTR-F（ハーフカウル装着モデル）やVTR Type LD（ローダウンモデル）といったバリエーションも登場しました。しかし、2017年8月、欧州Euro4規制への対応を見送る形で生産終了となりました。

まとめ

VTRは、そのスタイリッシュなデザイン、扱いやすい車体、そして力強いVツインエンジンで多くのライダーを魅了しました。排出ガス規制への対応や時代の変化に対応しながらも、基本コンセプトを守り続けることで、長年に渡り愛され続けたロングセラーモデルと言えるでしょう。ホンダの技術とこだわりが詰まった、名車と言えるでしょう。

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