ホーカー ハート

ホーカー・ハート：戦間期の空を制した軽爆撃機

ホーカー・ハートは、第一次世界大戦後から第二次世界大戦前までの期間、イギリス空軍において主力軽爆撃機として活躍した複葉機です。その高い性能と整備性の良さから、戦間期の軍縮期においても大量生産され、数多くの部隊に配備されました。本機はイギリス空軍のみならず、他国空軍にも輸出され、様々な派生型を生み出すなど、その影響は計り知れません。

開発の経緯

1926年、イギリス航空省は、既存の爆撃機の後継機を求め、新型機の開発計画を立案しました。ホーカー社は、この計画に応じるべく、シドニー・カムを主任設計者として開発チームを編成。短期間で設計を完了させ、試作機の製作に着手しました。採用されたエンジンはロールス・ロイス社の新型エンジンで、このエンジンを搭載した試作機は、1928年に初飛行。数々の競合機との比較試験で圧倒的な性能を示し、制式採用が決定されました。

イギリス空軍での運用

ホーカー・ハートは、イギリス空軍への配備開始後すぐに、その高速性を活かした防空任務に就きました。大量生産体制によって、短期間で多くの部隊に配備され、1933年には6個飛行中隊が本機を装備するまでに至ります。さらに、予備役部隊の近代化計画にも採用され、1936年までには9個の予備役飛行中隊がホーカー・ハートを運用していました。イギリス国内での生産は、ホーカー社のみならず、アームストロング・ホイットワース社、グロスター社、ビッカース社など複数の企業が担い、1939年まで第一線で活躍しました。 第二次エチオピア戦争時には中東への展開も行っています。

他国での運用とライセンス生産

イギリス以外にも、ホーカー・ハートは世界中の空軍に輸出されました。ユーゴスラビア、エストニア、スウェーデンなどが導入国として挙げられ、なかでもスウェーデンではライセンス生産も行われました。特に南アフリカ空軍は、約180機と最大規模でホーカー・ハートを運用しました。それぞれの国の空軍では、独自の運用方法や改良が施された事例も確認できます。例えばエストニア空軍は、水陸両用運用を可能にする改造を施し、多様な任務に対応しました。

多様な派生型

ホーカー・ハートは、その優れた基本設計をベースに、数多くの派生型が開発されました。連絡機型、練習機型に加え、戦闘機型であるデモン(Demon)、艦載機型であるオスプリ(Osprey)、そして直接協同機型であるオーダックス(Audax)、ハーディ(Hardy)、ハ[インド]、ヘクター(Hector)など、多様な任務に対応できるバリエーションが開発されました。これらの派生型は、それぞれに独自の改良が加えられ、性能向上や運用性の向上が図られています。例えば、デモンはハートの機体に武装を追加し、戦闘機として高い能力を発揮しました。また、オスプリは艦載機として運用するために、主翼折りたたみ機構やフロート装備などを備え、空母や巡洋艦からの発艦・着艦を可能にしました。 さらに、オーダックスは地上部隊との連携を重視した設計となっており、通信設備の強化などが行われています。

ハートの性能

ホーカー・ハートの基本型は、ロールス・ロイス ケストレルIBエンジンを搭載し、最高速度298km/h、航続距離692kmという性能を誇っていました。武装は、機首に固定機関銃、後部座席に旋回機関銃、さらに爆弾を搭載可能であり、多用途性を備えていました。

結語

ホーカー・ハートは、戦間期の空を彩った名機の一つです。その高い性能、整備性の良さ、そして多様な派生型は、イギリス空軍のみならず、世界各国の空軍に大きな影響を与えました。その活躍は、第二次世界大戦勃発後も、その後の航空機開発に大きく貢献したと言えるでしょう。

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