ボチカイ・イシュトヴァーン

ボチカイ・イシュトヴァーン：トランシルヴァニア公、反ハプスブルク蜂起の指導者

ボチカイ・イシュトヴァーン（1557年1月1日 - 1606年12月29日）は、16世紀から17世紀にかけてのハンガリー、トランシルヴァニアにおける重要な人物です。彼はトランシルヴァニア公を務め、また、王領ハンガリーで発生した反ハプスブルク蜂起の指導者としても知られています。

生い立ちと初期の活動

1557年、ボチカイ・イシュトヴァーンは、当時ハンガリー王国の一部であったコロジュヴァール（現在のルーマニア、クルジュ＝ナポカ）で生まれました。彼は名門貴族ボチカイ家の一員であり、その中でも最も著名な人物の一人です。

初期には、トランシルヴァニア公バートリ・ジグモンドの主要な相談役として活躍しました。ボチカイは、オスマン帝国との同盟ではなく、神聖ローマ皇帝との同盟を主君に進言し、プラハやウィーンへの外交交渉に奔走しました。しかし、後にバートリ家との関係が悪化し、領地を没収されたため、神聖ローマ皇帝の庇護を求めることになります。

反ハプスブルク蜂起の指導者として

ハプスブルク家（特に皇帝ルドルフ2世）が王領ハンガリーの国法を無視し、プロテスタントの権利を剥奪したことが、ボチカイが皇帝と対立する大きな要因となりました。皇帝軍の将軍たちがトランシルヴァニアで略奪や暴行を繰り返したことも、彼の反感を強めました。

トランシルヴァニアの独立を守るため、ボチカイはオスマン帝国の支援を受けるようになります。1605年、彼はトランシルヴァニア公に選出され、オスマン帝国のスルタン・アフメト1世からも祝福を受けました。彼は王としての待遇を拒否しましたが、オスマン帝国との同盟関係を巧みに利用しました。

ウィーンの和約

ハプスブルク家はハンガリーを維持するため、マティアス大公がルドルフ2世に代わってボチカイとの交渉を進め、1606年にウィーンの和約が締結されました。この和約により、王領ハンガリーとトランシルヴァニアにおける国法、宗教的権利、特権が保障され、ボチカイはトランシルヴァニア公として承認されました。また、トランシルヴァニア人が君主を選ぶ権利も公認されました。

ボチカイは、トカイ要塞と周辺の3県を割譲されました。

死去とその後

ボチカイは外交で大きな成功を収めましたが、健康状態は悪化していきました。彼は毒殺の疑念を抱き、宰相を投獄しましたが、和約締結からわずか5か月後の1606年12月29日に病死しました。彼の死後、家臣たちは宰相を殺害しました。

ボチカイの死後、ラーコーツィ・ジグモンドがトランシルヴァニア公となりました。ボチカイの治世は短期間でしたが、ウィーンの和約はトランシルヴァニアの歴史において重要な意味を持ち、その後の歴史に大きな影響を与えました。

ボチカイ・イシュトヴァーンは、その政治的手腕とリーダーシップによって、トランシルヴァニアの独立を守り、ハンガリーにおける宗教的自由と権利を擁護した英雄として記憶されています。

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