ボニファティウス9世 (ローマ教皇)

ボニファティウス9世：教会大分裂時代のローマ教皇

ボニファティウス9世（1350年 - 1404年）は、14世紀末から15世紀初頭にかけて、長く続いた教会大分裂の時代にローマ教皇の座に就いた人物です。ナポリ出身の貴族、ピエトロ・トマセッリをその名とし、枢機卿を経て、1389年に教皇に選出されました。

ボニファティウス9世の教皇選出は、教会大分裂をさらに複雑なものにしました。アヴィニョンに拠点を置く対立教皇クレメンス7世は、彼の選出を認めず、ボニファティウス9世もクレメンス7世を破門。この対立は、クレメンス7世の後継者であるベネディクトゥス13世の時代にも継続しました。ボニファティウス9世は、ベネディクトゥス13世との話し合いにも応じず、分裂は長期化の一途を辿りました。

ローマとの関係も複雑でした。当初は良好な関係にあったローマですが、1398年にはローマの支配権を握ることになります。また、ローマ王の承認をめぐる問題も彼の治世を特徴づける出来事です。1400年にローマ王ヴェンツェルが廃位され、ループレヒトが新たなローマ王として擁立されると、ボニファティウス9世は、ループレヒトの承認をなかなか認めませんでした。これは、ヴェンツェルらルクセンブルク家の動向を見極めていたためであり、内紛が起きた段階で承認を与えるつもりだったようです。しかし、その間にも、ハンガリー王ジギスムントへの貴族反乱を利用し、1401年と1403年の2度にわたりラディズラーオ1世をハンガリー王として承認したため、ジギスムントの怒りを買い、ハンガリーからの資金供給や教会人事権を禁止されるという事態に陥りました。

ボニファティウス9世の在位中は、財政難に苦しむことになります。資金調達のために聖職売買や贖宥状の販売を行い、重税を課すなど、手段を選ばないやり方が悪名として後世に伝えられています。また、ネポティズム（親族への私的な恩恵の与え）も問題となりました。

1404年9月、ベネディクトゥス13世は教会大分裂の終息に向けた使節団を派遣しました。しかし、ボニファティウス9世は話し合う意思はなく、使節団と口論になった末、聖職売買を非難されたことに激昂し、倒れて亡くなったと伝えられています。彼の死後、インノケンティウス7世が新たなローマ教皇となりましたが、彼もベネディクトゥス13世との話し合いを拒否し、教会大分裂は依然として継続しました。

ボニファティウス9世の治世には、幾度かの聖年（1390年と1400年）や、1400年のコロンナ家の反乱（8000人の兵がローマ教皇庁を攻撃するも鎮圧）など、重要な出来事が数多くありました。これらの出来事は、当時の政治情勢や社会状況を反映しており、教会大分裂という複雑な時代背景の中で、ボニファティウス9世がどのように対応したのかを理解する上で重要な手がかりとなります。ボニファティウス9世の生涯と彼の決断は、教会史、そして中世ヨーロッパ史における重要な一章を成しています。

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