ボリス・デ・ラケヴィルツ

ボリス・デ・ラケヴィルツ：エジプト学と秘教学の巨匠

ボリス・デ・ラケヴィルツ（1926年-1997年）は、20世紀を代表するエジプト学者、考古学者、そして秘教学者として知られています。イタリア・ローマ生まれの彼は、アカデミア・ヴァチカーナでヴァチカン外交を学び、その後、ローマのポンティフィチオ・インスティテュート・ビブリコでエジプト学を専攻しました。

教育と研究の軌跡

彼の学問的探究は、ローマでの古典教育から始まりました。1951年から1955年にかけては、ローマのポンティフィチオ・インスティテュート・ビブリコでエジプト学に没頭し、その後はイタリア外務省の奨学金を得て、カイロ大学で著名なエジプト学者ルートヴィッヒ・カイマー教授に師事しました。カイマー教授との共同研究は、彼の学問的基盤を確固たるものにしました。カイマー教授の死後、ラケヴィルツは1969年にバーゼルにルートヴィッヒ・カイマー財団を設立し、教授の比較手法を継承、発展させました。同年、ヨルダン大学の東洋考古学主任教授に就任するなど、国際的な活躍の場を広げていきました。

発掘調査と教育活動

ラケヴィルツはエジプト、ヨルダン、スーダンで精力的な考古学的発掘調査と民族学的調査を指揮しました。その結果、Nubitとシジルマサの古代都市を発見するなど、考古学の進歩に大きく貢献しました。さらに、ポンティフィカル・アーバン大学でエジプト学と民族考古学を教え、アメリカ合衆国の多くの大学でも講義を行いました。1970年から1973年にかけては、ルガーノのティチーノ高等研究所の所長も務め、幅広い分野で指導的役割を果たしました。1972年には、ヴァチカン大学のエジプト学教授に就任しています。

秘教学への関与と多様な著作

エジプト学、考古学、民族学の研究者として、彼は25以上の言語で科学書を著しました。その著作はエジプト学の分野に留まらず、秘教学にも及びます。特に、Tulliパピルスの転写と翻訳にも携わっていたことは注目に値します。彼の著作には、『古代エジプト恋愛詩集』『古代エジプト人の死者の書』など、エジプト文化を深く理解するための重要な文献が含まれています。また、『Black Eros: Sexual Customs of Africa from Prehistory to the Present Day』（邦題『ブラック・エロス』）など、アフリカの性風習を扱った著作も著しています。

詩人エズラ・パウンドとの繋がり

彼の私生活においても特筆すべきは、1946年に詩人エズラ・パウンドの娘メアリーと結婚したことでしょう。彼はパウンドの娘婿となり、パウンドがイタリアのブルンネンブルグ城で静養していた時期には、家族ぐるみで交流がありました。ブルンネンブルグ城は、ラケヴィルツ家が1927年から所有していた城で、パウンドはそこで『キャントウズ』の後半を執筆しました。彼の妻メアリーは、エズラ・パウンドの詩作品をイタリア語に翻訳しており、その翻訳活動にも貢献しています。

ラケヴィルツの遺産

ボリス・デ・ラケヴィルツは、エジプト学、考古学、民族学、そして秘教学に多大な貢献をした学者でした。彼の研究成果は、後世の研究者たちに大きな影響を与え続けています。彼の幅広い知識と多様な才能、そして国際的な活躍は、現代の学者たちにとって、今もなお学ぶべき点が多く存在します。ローマのヴェラノ墓地に眠る彼の功績は、これからも高く評価されるでしょう。

もう一度検索