ボリス・トライコフスキ

ボリス・トライコフスキ：民族融和に尽力したマケドニアの政治家

ボリス・トライコフスキ（1956年6月25日 - 2004年2月26日）は、マケドニア共和国（現北マケドニア）の政治家であり、1999年から2004年まで同国の大統領を務めました。彼は、民族間の対立が激化した時代に、平和と協調を追求した人物として知られています。

生い立ちと経歴

トライコフスキは、ユーゴスラビア社会主義連邦共和国内のマケドニア人民共和国、ストルミツァ近郊の村で生まれました。スコピエ大学法学部を卒業後、アメリカ合衆国で神学を学び、正教会からメソジスト派に改宗して教会司祭の資格を取得しました。商法・労働法の専門家として活動後、1996年には建設会社で法務部長を務めました。

政治家としての歩み

1992年にマケドニアがユーゴスラビアから独立を宣言すると、トライコフスキは政治活動を始め、内部マケドニア革命組織・マケドニア国家統一民主党（VMRO-DPMNE）に入党。党の中心メンバーとして活躍し、外務委員会の委員長などを歴任しました。1998年には外務副大臣に就任し、政界での地位を確立しました。

大統領として

1999年、トライコフスキは大統領選挙に出馬し、当選。しかし、彼の大統領在任期間は、マケドニアにおける民族間の緊張が高まった時期と重なりました。特に、2001年にはアルバニア系の武装勢力が蜂起し、政府軍との間で本格的な戦闘（マケドニア紛争）が発生しました。

大統領の権限が限られている状況下で、トライコフスキはNATOの仲介による停戦と和平に尽力。同年7月5日に停戦合意、8月13日にアルバニア系の地位向上に関する合意を取りまとめました。彼の民族間の対話推進への貢献は、国際社会からも高く評価されました。

2003年には、マケドニアの大統領として初めて日本を訪問し、天皇・皇后との会見や外務大臣との会談を行いました。

突然の死

2004年2月26日、トライコフスキはボスニア・ヘルツェゴビナでの会議に出席するため搭乗した政府専用機が、サラエヴォ近郊で墜落。彼を含む搭乗者全員が死亡するという悲劇に見舞われました。事故原因は、悪天候によるCFIT（操縦された飛行機が意図せず地面や水面に衝突する事故）と推定されています。

彼の死後、首相であったブランコ・ツルヴェンコフスキが大統領に選出されました。

ボリス・トライコフスキは、民族間の対立という困難な状況下で、平和と融和を追求し続けた政治家でした。彼のリーダーシップと和平への努力は、マケドニアの歴史に深く刻まれています。

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