ボリバル・ソベラノ

ボリバル・ソベラノ（Bolívar Soberano）とは

ボリバル・ソベラノ（Bolívar Soberano venezolano）は、ベネズエラの通貨として2018年 8月21日に導入されました。これは、それまで使用されていたボリバル・フエルテのデノミネーションに伴い、新たに発行された通貨です。しかし、ボリバル・フエルテと同様にハイパーインフレーションに見舞われ、急速に価値を失い、わずか3年ほどでボリバル・デジタルに取って代わられることとなりました。

概要

2018年3月22日、ニコラス・マドゥロ大統領は、通貨のデノミネーションを柱とする新たな通貨改革プログラムを発表しました。当初の計画では、同年6月4日に1000分の1のデノミネーションが実施される予定でしたが、計画の実施は2ヶ月延期され、8月には10万分の1に変更されました。この結果、旧通貨と比較して95%以上の大幅な切り下げが行われました。ベネズエラ中央銀行は、1000ボリバル以上のボリバル・フエルテ紙幣も補助通貨として一時的に利用可能と発表しました。

8月21日には新しい硬貨と紙幣の流通が開始されましたが、新紙幣の到着遅延により、交換可能額が生活に必要な金額を大幅に下回る10〜50ボリバルに制限されるなど、混乱が生じました。また、新通貨の流通開始と同時に最低賃金や消費税の引き上げも行われ、ベネズエラ政府が発行した暗号通貨であるペトロとペッグされ、1ペトロ=60ドル=3600ボリバルと定められました。

史上最速のハイパーインフレーション

ベネズエラ中央銀行は、このデノミネーションを「現金取引の容易化」や「通貨システムの簡素化」と称しましたが、実際にはインフレーションが加速し、2018年には169万8,488%に達し、ハイパーインフレーションに陥りました。国際通貨基金（IMF）は、インフレ率が2019年中に1,000万%に達すると予測しました。

通貨の急激な暴落を受け、ニコラス・マドゥロ政権は自由主義的な政策を部分的に導入せざるを得なくなりました。2019年9月にはインフレ率が9,500%、2020年には3,000%と低下傾向にはあったものの、依然として高いインフレーションが継続しました。流通開始当初は1ドル=60ボリバルでしたが、2020年11月には1ドル=100万ボリバルの水準にまで下落し、更なる経済の悪化や新紙幣発行の影響により、2021年8月には1ドル=410万ボリバル前後にまで悪化しました。

現在、ベネズエラの都市部ではアメリカドルやデビットカードなどの電子決済が主流となっており、ボリバルでの決済割合は全体の3割を下回っています。

2021年8月5日、ベネズエラ中央銀行は、同年10月に100万ボリバル・ソベラノを1ボリバル・デジタルにするデノミネーションを実施すると発表しました。

硬貨・紙幣

硬貨

流通開始時には、50センティモ硬貨と1ボリバル硬貨が発行されましたが、直後のハイパーインフレーションにより、市場に出回ることなくほぼ消滅しました。これらの硬貨の表面にはシモン・ボリバルの肖像が、裏面には額面とベネズエラの国章が描かれていました。

紙幣

2018年

ボリバル・フエルテと同様に、紙幣の表面にはベネズエラ出身のイスパノアメリカ独立戦争で活躍した人物が、裏面にはベネズエラゆかりの野生動物と国立公園の風景が描かれています。紙幣のデザインの一部は、ボリバル・フエルテの高額紙幣発行時に検討されていたデザインが流用されました。

紙幣の製造は全て外国に委託されており、2、200ボリバル紙幣は米クレーン・カレンシー社、5、10、50、100ボリバル紙幣はデ・ラ・ルー社、20、500ボリバル紙幣は露ゴズナク社が担当していました。

新紙幣の流通開始から4ヶ月も経たないうちに、2ボリバル紙幣は価値を失い、銀行や商店が受け取りを拒否するようになり、市場から姿を消しました。その後、半年以内には500ボリバル紙幣を除く全ての紙幣が価値を失いました。残った500ボリバル紙幣もわずか数円程度の価値しかなくなり、大量の札束を持ち歩いたり、ボリバルの代わりに菓子や日用品などを用いて取引を行う場面も見られました。

2019年

2019年6月、ベネズエラ中央銀行は、進行するインフレーションに対処するため、「通貨システムの補完と最適化」、「決済システムの効率化」を名目に新たな高額紙幣を発行しました。国内で行われていた紙幣印刷のコスト削減も目的とされ、シモン・ボリバルの肖像は500ボリバル紙幣のものを流用し、図柄や色彩も非常にシンプルなものとなりました。

ベネズエラの経済状況悪化により、紙幣製造にかかる費用の支払いが困難となり、紙幣製造はベネズエラと関係の深いロシアのゴズナク社に全て委託されました。さらに、2020年後半には国内の紙幣印刷工場が稼働不能となり、紙幣の印刷までもゴズナク社に委託せざるを得なくなりました。これに伴い、セキュリティスレッドから高度なホログラムが廃止された紙幣が流通し始めました。

結果として、500ボリバル紙幣の次の額面が1万ボリバル紙幣となり、1,000ボリバル単位の額面の紙幣は発行されませんでした。

2021年

2021年3月6日、ベネズエラ中央銀行は、2019年同様、通貨システムの補完と最適化を名目にさらに高額な新紙幣を発表しました。20万、50万ボリバル紙幣の図柄は2019年の紙幣の図柄を額面を除いて流用しています。100万ボリバル紙幣は、ベネズエラの独立を決定づけたカラボボの戦い200周年を記念した図柄となっています。

このシリーズの紙幣は、額面のゼロが「MIL（千）」や「MILLÓN（百万）」で省略されています。特に100万ボリバル紙幣は、この省略によって額面の数字が「1」となっていることから、ベネズエラ中央銀行が既存の紙幣のデザインを流用しながら100万分の1のデノミネーションを実施する可能性が指摘されていました。そして実際に、100万ボリバル紙幣のデザインはボリバル・デジタルの5〜100ボリバル紙幣にそのまま流用されることとなりました。

結果として、2019年版の5万ボリバル紙幣の次の額面が2021年版の20万ボリバル紙幣となり、1の単位の10万ボリバルの額面が欠けるという、少し変則的な状態となりました。

為替レート

（為替レートは変動するため、最新の情報を参照してください）

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