デ・ラ・ルー

デ・ラ・ルー：セキュリティ印刷のパイオニア

デ・ラ・ルー（De La Rue plc）は、セキュリティ印刷、製紙、紙幣鑑別システムを専門とするイギリスの企業です。ロンドン証券取引所に上場しており、FTSE250指数の構成銘柄の一つです。本社はハンプシャー州ベイジングストークに、工場はタインアンドウィア州ゲーツヘッドにあります。

創業と発展

1821年、トーマス・デ・ラ・ルーによって文房具商、印刷工、小間物屋として創業しました。初期にはトランプの製造で成功を収め、1831年には英国王室御用達となりました。1855年に切手の印刷を開始し、1860年には紙幣印刷へと事業を拡大しました。19世紀後半には同族会社から私会社へ、そして1921年には株式公開を行い公開有限会社となりました。1947年にはロンドン証券取引所に上場を果たしました。社名は数回変更され、1991年からは現在の「De La Rue plc」となっています。

事業内容

紙幣

デ・ラ・ルーは、高度なセキュリティ印刷・製紙技術を強みとして、世界中の150種類以上の紙幣を製造しています。イラク中央銀行、イングランド銀行、ケニア中央銀行など多くの国の銀行で採用されています。過去にはスイスの紙幣も製造していました。

セキュリティ印刷・製紙

紙幣以外にも、パスポート、証票、収入印紙、トラベラーズチェック、運転免許証、銀行小切手、切手といったセキュア文書の製造を手がけています。

その他の製品

紙幣鑑別システムを応用した紙幣カウンター、紙幣分別機、貨幣分別機、ATM、発券機などの現金処理機器も製造しています。また、クレジットカード、紙幣、その他のセキュア文書に使用されるホログラム印刷も行っています。

かつての製品

トランプ

1843年に海外への輸出を開始し、トーマス・デ・ラ・ルーがデザインしたトランプは、今日使われる標準的なトランプのデザインの基礎となりました。トランプ事業は1969年にジョン・ワディントンに売却されました。

切手

紙幣と同様に、イギリスやかつてのイギリス植民地向けに切手を印刷し、喜望峰の三角切手など有名な切手も手がけました。

万年筆

デ・ラ・ルーは1881年に実用的な万年筆を開発したと主張しており、同社の万年筆は「オノト（Onoto）」ブランドで知られています。特に「オノトプランジャ方式」は、日本のインク止め式万年筆の発展に影響を与えたとも言われています。また、1911年には丸善の注文を受け、普及型の万年筆「オリオン（Orion）」を発売し、万年筆の普及に貢献しました。

文豪の夏目漱石もデ・ラ・ルーの万年筆を愛用しており、丸善のカタログに寄稿したエッセイで、贈られたオノトの書き心地を絶賛しています。丸善は創業140周年を記念し、漱石が使用したオノト万年筆を再現した「漱石」を限定販売しました。

まとめ

デ・ラ・ルーは、その長い歴史の中で、紙幣、セキュア文書、そしてかつてのトランプや万年筆製造を通して、社会に貢献してきました。高度な技術力と長年の経験により、セキュリティ印刷分野において世界的なリーダーとしての地位を確立しています。

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