ボルセーナのミサ

『ボルセーナのミサ』の概要

『ボルセーナのミサ』（Messa di Bolsena）は、イタリアのルネサンス期の巨匠ラファエロ・サンティによって1512年から1514年にかけて描かれたフレスコ画です。この作品は、現在ヴァチカン宮殿の「ラファエロの間」に位置しており、ローマ教皇ユリウス2世の依頼によって制作されました。ラファエロがこの部屋を装飾する際の一部として贈られたもので、特にその宗教的なテーマや歴史的背景が注目されています。

作品の内容

このフレスコ画が表現しているのは、1263年に実際に起きた「聖体の奇跡」です。当時、ローマ教皇ウルバヌス4世がその背景にいる時代に、ボルセーナのサンタ・クリスティーナ教会での出来事が描かれています。聖体の変化に疑念を抱いていたボヘミアの司祭がミサを執り行う際、聖餐のパンが血を流し始め、その血が十字架の形を成しました。この奇跡を目の当たりにした司祭は、自らの信仰を取り戻すことになります。この出来事は、カトリック教会において非常に重要な教義の証明として受け入れられ、後にウルバヌス4世によって「聖体の祝日」が設けられることになりました。

血に染まった「ボルセーナの布」は、今日でもオルヴィエート大聖堂の重要な聖遺物として崇められており、この大聖堂自体がこの奇跡を記念するために建立されたのです。

画面の構成

描かれた場面の中では、ミサを行う司祭の近くに膝をつくユリウス2世が確認できます。彼は奇跡の証人として描かれ、1506年にはオルヴィエート大聖堂を訪れ、その聖遺物を拝したことが明らかです。ユリウス2世はボローニャから管轄を奪還するために努力を重ね、その実現は1512年の6月に成し遂げられました。

画面右下には教皇を護衛するスイス衛兵の姿も見受けられ、彼らはユリウス2世によって設立された教皇の護衛軍です。彼らの装備や服装の特徴は、1512年という制作年を特定する手助けとなります。また、数人のスイス衛兵の中にはラファエロ自身の自画像とされる人物も描かれています。

左側の階段下には、ユリウス2世の娘であるフェリーチェ・デッラ・ローヴェレが描かれており、彼女は横顔で表現されています。画面の右側には、ユリウス2世の親族である枢機卿たちが描かれており、それぞれの人物が特定されています。具体的には、レオナルド・グロッソ・デッラ・ローヴェレ、ラファエロ・リアーリオ、トンマーゾ・リアーリオ、アゴスティーノ・スピノーラの四人です。

まとめ

『ボルセーナのミサ』は、ラファエロの技術とその時代の信仰を映し出す傑作であり、奇跡の物語を通じて見る者に深い印象を与えます。また、この絵画は、当時のカトリックの文化的背景や教皇ユリウス2世の信念とも強く結びついていることから、その歴史的意義も高く評価されています。彼の代表作の一つとして、見逃せない作品です。

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