ボルボ RM12

ボルボ RM12：サーブ 39 グリペンを支える高性能ターボファンエンジン

ボルボ RM12は、スウェーデンのボルボ・エアロ（現GKNエアロスペース エンジン システムズ）が、サーブ 39 グリペン戦闘機のために開発したアフターバーナー搭載の低バイパスターボファンエンジンです。元々はゼネラル・エレクトリック（GE）のF404をベースに開発されました。

設計と開発

RM12は、単発機であるグリペンの信頼性と生存性を高めるため、また、推力向上を目的として、F404から大幅な改良が加えられました。主な変更点は以下の通りです。

信頼性と生存性の向上: バードストライク耐性の強化など、過酷な状況下での運用を想定した設計が取り入れられました。
推力向上: 気流量を約10%、排気流量を約15%増大させることで、推力を18,000ポンドまで向上させています。
FADEC（完全デジタルエンジン制御）システムの追加: エンジンの動作を最適化し、燃費向上や整備性の向上に貢献しています。
整備性の向上: 複数の付属機器や構成要素が再設計され、整備の必要性が低減されました。例えば、フレームホルダーは空冷式に変更され、寿命が3倍に向上しています。また、内視鏡点検用の窓が13箇所設けられ、エンジン内部の状態を容易に確認できるようになりました。さらに、20個のセンサーから得られたデータは、飛行5回ごとに自動的にダウンロードされ、整備や改良に活用されます。エンジン自体も7つのモジュールに分割され、モジュール単位での交換が可能になりました。
ステルス性の向上: エンジンの吸気口は、レーダー反射断面積を最小化するように設計されており、機体全体のステルス性能向上に貢献しています。また、排気温度を低下させることで、赤外線放射を抑制する工夫も凝らされています。

アナログ式だったF404のエンジン制御装置は、ボルボとGEが共同開発した新しいデジタル制御装置に置き換えられました。この新しい制御装置は、操縦席とデジタルデータバス、そして冗長系として機械油圧系の電線一本を備えており、エンジンへの燃料供給量を精密に制御します。機械油圧式のバックアップにより、冗長性は大幅に向上しました。1996年からはFADECの開発が開始されましたが、アメリカ国防総省からの技術提供が得られなかったため、ボルボ社がGEの協力を得て独自に開発し、搭載に至りました。FADEC搭載後も、機械的なバックアップ装置は残されています。

GEはエンジン全体の約50%を生産しており、ファン/圧縮機ディスクと筐体、圧縮機軸、ハブ、シール、アフターバーナーなどの部品はスウェーデンで製造され、最終的な組み立てもスウェーデンで行われます。

搭載機

サーブ 39 グリペン
IAI ナメル（設計のみ）

スペック（ボルボ RM12）

形式: アフターバーナー装備 ターボファン
全長: 4.04m
直径: 0.889m
乾燥重量: 1055kg
圧縮機: 軸流式（ファン3段、7段圧縮機）
燃焼器: アニュラ型
タービン: 低圧1段、高圧1段
推力:
54kN (戦闘推力)
80.5kN (アフターバーナー使用時)
全圧縮比: 27.5:1
バイパス比: 0.31:1
空気流量: 68kg/s
燃料消費率:
戦闘推力時: 23.9mg/Ns
アフターバーナー使用時: 50.6mg/Ns
推力重量比: 7.74:1

関連項目

航空用エンジンの一覧
ゼネラル・エレクトリック YJ101
ゼネラル・エレクトリック F404
ゼネラル・エレクトリック F414
ゼネラル・エレクトリック F110

比較可能なエンジン

GTRE GTX-35VS カヴェリ
WS-13
クリーモフ RD-33
スネクマ M88
ターボ・ユニオン RB199

外部リンク

RM12 page on GKN website
GE Aviation RM12

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