ボロブドゥール寺院遺跡群

ボロブドゥール寺院遺跡群：東南アジアを代表する仏教遺跡

インドネシア、ジャワ島中部に位置するボロブドゥール寺院遺跡群は、ユネスコの世界文化遺産に登録されている、壮大な仏教遺跡です。この遺跡群は、ボロブドゥール寺院、パウォン寺院、ムンドゥット寺院の3つの寺院から構成されており、8世紀から9世紀にかけて、シャイレーンドラ朝時代に建造されました。

ボロブドゥール寺院：仏教宇宙観を象徴する曼荼羅

ボロブドゥール寺院は、ジョグジャカルタの北西約42km、ムラピ火山の麓に位置しています。総面積約1.5万㎡、高さ33.5m（建造当初は42m）の巨大な石造建築で、9層の階段状ピラミッド構造をしています。最下層は巨大な基壇で、その上に5層の方形壇、さらに3層の円形壇が積み重なり、仏教の三界を表していると言われています。

寺院内部には空間がありません。特徴的なのは、5層の方形壇の回廊に、仏教説話を描いた1460面ものレリーフが時計回りに連続している点です。回廊の壁龕には432体の仏像が安置され、3層の円形壇上には釣鐘状のストゥーパ（仏塔）72基があり、それぞれに仏像が納められています。合計で504体の仏像が存在します。これらのレリーフと仏像は、インドのグプタ様式の影響を強く受け、精巧な彫刻技術と洗練された表現で知られています。

ボロブドゥール寺院は、世界最大級のストゥーパでもあります。72基のストゥーパは三重円を描くように配置され、頂上には、釈迦の遺骨を納めたとされる大きなストゥーパがそびえ立ちます。中心塔は空っぽで、「空」の思想を表していると考えられており、ジャワ仏教独自の解釈が見て取れます。寺院全体は、仏教的、特に密教的な宇宙観を象徴する巨大な曼荼羅であり、須弥山を模したものとも考えられています。

2006年のジャワ島地震では、寺院の一部が損傷を受けましたが、その後、専門家による調査と修復作業が行われています。

ムンドゥット寺院とパウォン寺院：ボロブドゥール寺院を補完する周辺寺院

ボロブドゥール寺院の東約3kmにあるムンドゥット寺院は、堂内に安置された3体の石造仏、特に中央の如来倚座像の美しさで知られています。入口の内壁には、鬼子母神と毘沙門天を描いたレリーフが残されています。

パウォン寺院は、ボロブドゥール寺院とムンドゥット寺院を結ぶ線の中間地点に位置します。この3つの寺院の位置関係から、この地域がかつて、多くの寺院からなる大規模な仏教複合施設だった可能性が示唆されています。

世界遺産としての価値

ボロブドゥール寺院遺跡群は、以下の世界遺産登録基準を満たしています。

(1) 人類の創造的才能を表現する傑作
(2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの
(6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの

ボロブドゥール寺院遺跡群は、その規模、構造、芸術的価値において、アンコールワットと並ぶ東南アジアを代表する仏教遺跡であり、貴重な文化遺産として高く評価されています。

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