ボーイング747-SP

ボーイング747-SP（Boeing 747-SP）

ボーイング747-SPは、アメリカの航空機メーカーであるボーイング社によって開発された大型旅客機で、747シリーズの中でも特に航続距離に優れたモデルです。この機体は、ボーイング747の派生版として位置づけられ、「SP」は「Special Performance」の略称です。747-SPは、大幅に短縮された胴体と改良された翼を持ち、通常の747シリーズの特徴である大きな積載能力を犠牲にすることで、東京からニューヨークへ無着陸での直行便運航を実現しました。

開発の背景

ボーイング747は1970年に就航し、当時の旅客機としては相当なキャパシティを誇っていましたが、東京とニューヨーク間を直行する能力には限界がありました。これに伴い、各航空会社はサンフランシスコやアンカレッジ経由での運航を余儀なくされていました。パンアメリカン航空のファン・トリップ会長は、ボーイング含む大手航空機メーカーに対し、無着陸便運航のための新機体の開発を要請したことが、747-SPの開発のきっかけとなりました。

ボーイング社は、パンアメリカン航空からの要請に応じて、747の標準モデルを短胴化した「747-SB」を開発しました。さらなるヒアリングを重ねた結果、1973年に747-SPの開発が正式にスタートしました。開発過程では、当初の注文数以上の発注が見込まれ、1975年に初飛行し、1976年にはパンアメリカン航空向けの初号機が納入されました。

就航とその影響

747-SPの1号機は1976年4月25日に東京-ニューヨーク間の無着陸便運航を開始しました。この新たな直行便の運航により、従来の経由便を利用していた日本航空やノースウエスト航空は市場競争に大きな打撃を受けました。一方、既にボーイング747の他のモデルを導入していたこれらの航空会社は、747-SPの座席数の減少により収益性が悪化することを懸念し、この機体の導入を見送ることとなりました。特に日本航空は、747-SPよりもコンパクトなマクドネル・ダグラス DC-10を選択しました。

しかし、747-SPは超長距離路線を必要とする航空会社にとって魅力的な選択肢でした。大韓航空やブラニフ航空といった他の航空会社は747-SPを導入し、特に政治的な理由で迂回路が不可避な航空会社にとって、この機体は重要な運航手段となりました。

世界最速記録とその後

747-SPの特筆すべき出来事として、パンアメリカン航空の747-SPが1976年に成し遂げた世界一周飛行記録があります。ニューヨークを出発したこの便は、46時間46秒で世界一周を達成しました。これは747-SPの航続距離と性能を示す一例です。しかし、1980年代半ばに他の高性能モデルの登場や需要の変化により、747-SPの生産は1989年に終了しました。

生産中止後も747-SPは、中古市場での需要があり、ナミビア航空やアメリカン航空、政府専用機としても利用されました。特に、サウジアラビアやブルネイなどの産油国では政府専用機としての役割を果たし、さまざまな改造が施されました。

機体の特性

747-SPは、他の747モデルに比べて全長が削減されており、軽量化のために短胴化されていますが、航続距離は12,325 kmと非常に長く、当時の旅客機の中では最高のレベルでした。エンジンもプラット・アンド・ホイットニー製とロールス・ロイス製があり、出力に優れた性能を発揮しました。

現在の状況と事故

2022年現在、747-SPで破損した機体は確認されておらず、過去の重大インシデントの一つには1985年のチャイナエアラインの事故があります。この事故では、エンジントラブルにより機体が空中分解の寸前まで至りながらも無事に着陸しました。

747-SPは、その歴史的背景と航続距離の優位性から、多くの航空会社や政府需要に応え、今なお評価されています。

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