ボードゥアン2世 (エノー伯)

ボードゥアン2世の生涯

ボードゥアン2世（1056年 - 1098年?）は、エノー伯として歴史に名を刻む人物です。彼はフランドル伯ボードゥアン6世とエノー女伯リシルドの次男として生まれました。兄アルヌールの戦死後、エノー伯位を継承しましたが、フランドル伯位は叔父ロベール1世に奪われました。ボードゥアンが未成年の間、母リシルドはフランドル伯位奪還を試みましたが、ロベール1世に打ち負かされました。

リシルドは資金調達のために領地をリエージュ司教領に委ね、その資金で同盟を結成しました。しかし、ロベール1世はブロクロワで同盟軍を破り、リシルドの試みは失敗に終わります。ボードゥアンは、領地の一部をリエージュ司教に売却した後、ゴドフロワ・ド・ブイヨンの軍に加わり、第1回十字軍に参加しました。この時、彼は親族であるフランドル伯ロベール2世の軍ではなく、ゴドフロワの軍を選んだことが特筆されます。

1098年、アンティオキア攻囲戦後、ボードゥアンは東ローマ皇帝アレクシオス1世コムネノスの支援を求めるため、ヴェルマンドワ伯ユーグ1世と共にコンスタンティノープルへ派遣されました。しかし、アナトリアでセルジューク・トルコ軍の襲撃を受け、行方不明となりました。彼の安否は長らく不明で、おそらく殺害されたと考えられています。1106年には、妻イドがエルサレム巡礼の際にアナトリアで夫の捜索を試みましたが、発見には至りませんでした。

子女

ボードゥアン2世は、1084年にルーヴァン伯アンリ2世の娘イドと結婚し、多くの子女をもうけました。彼らの子供たちは以下の通りです。

ボードゥアン3世 (1088年 - 1120年): エノー伯を継承。
ルイ: 詳細は不明。
シモン: リエージュの律修司祭。
アンリ: 詳細は不明。
ギヨーム: 1117年以降に没。
アルヌール: ルー領主となり、ベアトリス・ダトと結婚。ウスタシュ1世・ド・ルーの父。
イド (1085年頃 - 1101年以降): ギー・ド・シエーヴルと結婚後、クシー領主トマ・ド・マルルと再婚。
リシルド (1095年頃 - 1118年以降): アモーリ3世・ド・モンフォールと結婚するが後に離婚し、モブージュ修道院の修道女となる。
アレイディス (1098年以前 - 1153年): ニコラ2世・ド・ルミニーと結婚。

ボードゥアン2世の生涯は、エノー伯としての治世、フランドル伯位を巡る争い、そして第1回十字軍への参加と悲劇的な最期によって特徴づけられます。彼の子供たちは、その後の歴史の中で重要な役割を果たすことになります。

参考文献

Gilbert of Mons (2005). Chronicle of Hainaut. Translated by Laura Napran. Woodbridge: Boydell Press.
Riley-Smith, Jonathan (2004). The First Crusaders 1095-1131. Cambridge, third print.
Murray, Alan V. (2000). The Crusader Kingdom of Jerusalem: A Dynastic History, 1099-1125. Prosopographica et Genealogica.

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