ボードゥアン2世 (エルサレム王)

ボードゥアン2世・デュ・ブールの生涯

ボードゥアン2世（Baudouin II du Bourg, 1060年 - 1131年8月21日）は、フランス出身の貴族であり、第1回十字軍に参加しました。彼は、エデッサ伯（1100年 - 1118年）を経て、エルサレム王（1118年 - 1131年）に即位しました。その生涯は、十字軍国家の発展と安定に大きく貢献したと言えるでしょう。

生い立ちとエデッサ伯時代

ボードゥアンは、ルテル伯ユーグ1世とメリザンド・ド・モンレリの子として生まれました。初代エデッサ伯であり、後に初代エルサレム王となるボードゥアン1世とは遠縁の関係にありました。また、彼の後を継いでエデッサ伯となるジョスラン1世・ド・クルトネーとは、母親同士が姉妹という間柄でした。1100年、エルサレムの初代聖墓守護者ゴドフロワ・ド・ブイヨンが後継者なく死去すると、エデッサ伯であったボードゥアン1世がエルサレム王に就任しました。これにより、ボードゥアン2世はエデッサ伯位を継承することになりました。

エルサレム王への即位

エルサレム王となったボードゥアン1世には子供がいなかったため、自身の後継者として兄のブローニュ伯ウスタシュ3世を指名しました。また、兄が継承できない場合は、ボードゥアン2世を後継者とする意思も示していました。1118年4月2日、ボードゥアン1世が死去すると、エルサレムに滞在していたボードゥアン2世が、在地貴族の支持を得てエルサレム王位に就きました。一方、フランスにいたウスタシュは弟の死を知りエルサレムへ向かいましたが、ボードゥアンが既に王位に就いていることを知り帰国し、これによりボードゥアン2世のエルサレム王位は確固たるものとなりました。

エルサレム王としての治世

ボードゥアン2世は、エルサレム王として、先王時代に権勢を誇ったロレーヌ出身の貴族に代わり、自らの血縁者であるルテル家、モンレリ家、クルトネー家、そして新興のブリズバール家を重用しました。また、1119年には義弟にあたるアンティオキア公国の摂政サレルノ伯ロジェが戦死したため、若年の公ボエモン2世の摂政を務めることになりました。彼は、ボエモン2世と娘アリックスを結婚させることで、アンティオキア公国との連携を強化しましたが、1130年にボエモン2世が死去すると、娘アリックスとの間で権力争いが勃発しました。

1123年、ボードゥアン2世は北シリアで捕虜となり、1年間幽閉されましたが、無事に帰還することができました。帰還後、彼はアレッポやダマスカスの占領を試みましたが、その目的を達成することはできませんでした。

後継者と死

ボードゥアン2世には男子がおらず、4人の娘がいました。そのため、長女メリザンドを後継者に指名し、アンジュー伯フルク5世と結婚させました。二人の間には後のボードゥアン3世が誕生し、ボードゥアン2世は1131年に死去する際、孫のボードゥアンをメリザンドとフルク5世の共同相続人としました。彼の死後、メリザンドとフルク5世が共同統治の形でエルサレム王位を継承しました。

テンプル騎士団の創設への貢献

ボードゥアン2世は、エルサレム王に即位した後、かつての宮殿の一部であった「ソロモンの神殿」と呼ばれた場所を修道騎士団に提供しました。これが後にテンプル騎士団と呼ばれる組織の始まりとなりました。彼のこの決断は、十字軍国家における軍事力の強化に大きく貢献しました。

子女

ボードゥアン2世は、1101年にアルメニアのメリテネ領主ガブリエルの娘モルフィアと結婚し、4人の娘をもうけました。

メリザンド：エルサレム女王、アンジュー伯フルク5世と結婚。
アリックス：アンティオキア公ボエモン2世と結婚。
オディエルヌ：トリポリ伯レーモン2世と結婚。
イヴェット：ベタニアの聖マリア・聖マルタ修道院長。

参考文献

R.グルッセ 『十字軍』 白水社、1954年
A.ジョティシュキー 『十字軍の歴史』 刀水書房、2013年
* E.ハラム 『十字軍大全 年代記で読むキリスト教とイスラームの対立』 東洋書林、2006年

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