ボー・ブラメルズ

アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコを拠点に活動したロックバンド、ボー・ブラメルズ（The Beau Brummels）は、1964年に結成されました。バンドの初期メンバーには、リードボーカルのサル・ヴァレンティノ、リードギターのロン・エリオット、ベースのロン・ミーガー、リズムギターとハーモニカ担当のデクラン・マリガン、そしてドラムのジョン・ピーターセンが名を連ねていました。

彼らは、新しいレコードレーベル「オータム・レコーズ」との契約を目指していた地元のディスクジョッキーによって見出されます。このレーベルでは、後にスライ・ストーンとして世界的な名声を得るシルベスター・スチュワートが、彼らの初期のレコーディングセッションでプロデューサーを務めました。

結成当初、ボー・ブラメルズの音楽スタイルは、ブリティッシュ・インヴェイジョンによってもたらされたビート・ミュージックに、アメリカのフォークミュージックの要素を巧みに融合させたものでした。そのサウンドはしばしば同時期のビートルズと比較されましたが、彼らは独自の個性を確立していきます。特に、デビューシングル「Laugh, Laugh」は瞬く間にヒットし、バンドをメインストリームへと押し上げました。この曲は、その後のサンフランシスコにおけるサイケデリック・ロックやカントリー・ロックといった多様な音楽ムーヴメント、いわゆるサンフランシスコ・サウンドの基礎を築いた先駆的な作品の一つとして高く評価されており、ロックの殿堂が選ぶ「ロックンロールを形作った500曲」のリストにも名を連ねています。

「Laugh, Laugh」の成功に続き、1965年にリリースされたデビューアルバム『Introducing The Beau Brummels』や、同じくトップ10入りを果たしたシングル「Just a Little」によって、彼らの人気は確固たるものとなりました。しかし、翌年以降、彼らの商業的な勢いは鈍化し始めます。また、所属していたオータム・レコーズが経営難に陥り、ワーナー・ブラザースに買収されるという事態も、バンドの状況に影響を与えました。

メンバーの出入りも頻繁になりました。1965年にはマリガンが脱退。同年後半には、ロン・エリオットが糖尿病による発作のためツアーへの参加が難しくなったことから、ギタリストのドン・アーヴィングが加入します。しかし、アーヴィングもアルバム『Beau Brummels '66』リリース直後に兵役に就いたため脱退。ドラムのジョン・ピーターセンは、別プロジェクトであるハーパーズ・ビザールに参加するためバンドを離れ、ボー・ブラメルズは一時的にヴァレンティノ、エリオット、ミーガーのトリオ編成となります。さらに1968年にはミーガーが徴兵され、オリジナルメンバーはヴァレンティノとエリオットの二人だけとなりました。

デュオとなったヴァレンティノとエリオットは、著名なナッシュビルのセッションミュージシャンたちの協力を得て、カントリー色の強いアルバム『Bradley's Barn』を制作しました。このアルバムは評論家から高く評価されたものの、商業的な成功には繋がりませんでした。そして、1969年に二人はそれぞれのソロ活動や他のアーティストとのプロジェクトに専念するため、バンドとしての活動を休止します。

活動休止期間中、ヴァレンティノはワーナー・ブラザースからのソロシングルを経て、ヒッピーコミュニティであるホッグファームと関連のあったバンド「Stoneground」を結成し、3枚のアルバムを発表後に解散しました。一方、エリオットは1968年のヴァン・ダイク・パークスのデビューアルバムへの参加やエヴァリー・ブラザーズの編曲などを手掛けた後、1970年にソロアルバム『Candlestickmaker』をリリース。レヴィット＆マクルーアやパンのプロデュース、ヴァン・モリソン、ランディ・ニューマン、リトル・フィートといったアーティストのアルバムへの参加など、精力的に活動しました。脱退したメンバーでは、マリガンとミーガーがブラック・ベルベット・バンドで活動し、ピーターセンはハーパーズ・ビザールが1970年代初頭に解散するまで在籍しました。

1974年2月、ボー・ブラメルズがサンフランシスコで再結成されたことが報じられます。バンドは再びツアーを開始し、1974年のライブパフォーマンスは、後に『Live!』としてCD化されました。翌1975年4月には、セルフタイトルの新作スタジオアルバムをリリース。このアルバムはビルボード200チャートで180位を記録し、かつてのヒット曲「You Tell Me Why」の再録バージョンも収録されました。このアルバム発表後、バンドは再び解散状態に入ります。

しかし、ボー・ブラメルズという名義での活動は、その後も断続的に続きました。1970年代後半から1990年代半ばにかけて、ザ・スミザリーンズとの共演や、往年のサイケデリック世代のミュージシャンが集まったスーパーグループ「ダイナソーズ」の一員としてライブを行うことがよくありました。また、2000年のベイポップ2000フェスティバルや2002年のサマー・オブ・ラブ・フェスティバルといったイベントにも出演しています。

近年の動向としては、サル・ヴァレンティノが2006年にキャリア初のソロアルバム『Dreamin' Man』を発表し、その後も立て続けにソロ作品をリリースしています。ドラムのジョン・ピーターセンは、2007年11月11日に心臓発作で惜しまれつつ世を去りました。

そして、2013年3月、残されたオリジナルメンバーが集結し、新たなスタジオアルバム『Continuum』をリリースしました。この作品には、生前のピーターセンが1965年に録音したドラムトラックが使用され、ロン・エリオットが書き下ろした15曲が収められています。幾多の変遷を経ながらも、ボー・ブラメルズはアメリカン・ロック史において独自の輝きを放ち続けています。

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