ポアソン比

ポアソン比：材料の変形特性を知る指標

ポアソン比とは、材料に力を加えた際に、その力の向きと直角方向に生じる変形の度合いを表す指標です。例えば、ゴム棒を引っ張ると、長さは伸びますが、同時に太さは細くなります。この長さの変化と太さの変化の比、より正確には縦方向のひずみと横方向のひずみの比（負の値）がポアソン比です。

ポアソン比の定義と計算

材料にz軸方向に力を加えたとします。すると、z軸方向には伸び（縦ひずみεz）、x軸およびy軸方向には縮み（横ひずみεx、εy）が生じます。この現象をポアソン効果と呼びます。ポアソン比νは、以下の式で定義されます。

νx = -εx/εz

νy = -εy/εz

ここで、νxとνyはそれぞれx軸方向とy軸方向のポアソン比です。多くの材料では、νxとνyはほぼ等しいため、単にνで表されることが多いです。

ポアソン比と応力・ひずみの関係

ポアソン比は、材料の応力とひずみの関係を表すフックの法則に重要な役割を果たします。例えば、2次元板にx軸方向にのみ応力σxが加わるときのx軸方向とy軸方向のひずみεxとεyは、ヤング率Eを用いて以下のように表されます。

εx = σx/E

εy = -νσx/E

この式は、ポアソン比が正の値である限り、x軸方向に引張応力が加わるとy軸方向には縮み、逆に圧縮応力が加わるとy軸方向には伸びが生じることを示しています。

ポアソン比の範囲

ポアソン比は、材料の種類によって異なる値を取りますが、その値には理論的な上限と下限があります。一般に、等方性材料（どの向きから見ても性質が同じ材料）では、-1 < ν < 1/2の範囲に収まります。

νが-1に近い場合、材料を引っ張ると、引っ張る方向だけでなく、それに直角な方向にも伸びます。νが1/2に近い場合、材料を引っ張っても体積はほとんど変化しません。

負のポアソン比

理論的にはポアソン比は負の値を取り得ますが、等方性材料では観測されません。負のポアソン比を持つ材料は、引っ張ると細くなるのではなく太くなる、という特殊な性質を示します。このような材料は、異方性材料（向きによって性質が異なる材料）に多く見られ、その例として、シリコン単結晶や特定の構造を持つグラフェンなどがあります。

ポアソン比と他の弾性率

ポアソン比は、ヤング率、体積弾性率、剛性率など、他の弾性率と密接に関係しています。これらの弾性率は互いに関連しており、ポアソン比とヤング率が分かれば、他の弾性率を計算することができます。

まとめ

ポアソン比は、材料の変形特性を理解する上で非常に重要な指標です。その値は材料の種類や構造によって異なり、材料設計や構造解析において重要な役割を果たします。本記事で紹介した定義、計算方法、応力・ひずみとの関係、値の範囲を理解することで、材料力学のより深い理解につながるでしょう。 様々な物質のポアソン比は実験的に求められており、その値は材料データベースなどで参照できます。

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