ポケットコンピュータの製品一覧

ポケットコンピュータ：黎明期から終焉まで

ポケットコンピュータ（ポケコン）は、関数電卓の機能を拡張した携帯型コンピュータとして1980年代に隆盛を極めました。限られた機能と計算能力ながら、その安価さと携帯性から、プログラミングによる様々な用途への活用が可能でした。据え置き型のパーソナルコンピュータが普及していなかった時代には、限られた予算や作業スペースしかない職場や現場で重宝されました。

しかし、1990年代に入ると、携帯情報端末（PDA）などの登場により、ポケコンは徐々にその地位を失っていきました。PDAはアプリケーションソフトウェアを内蔵しており、ポケコンより多様な機能を提供したためです。2000年代には、一部が学校教育で関数電卓の上位機種として生き残りましたが、2010年代以降はノートパソコンやタブレット、スマートフォンの性能向上と普及により、教育現場でも急速に代替が進み、2015年には全てのポケコンの生産が終了しました。現在では、主に愛好家によるコレクターズアイテムとして市場に残っています。

主要メーカーと機種

以下では、主要メーカーのポケコン機種を年代順に概観します。

シャープ

シャープは、独自の省電力LSI組み込みMPUである「ESR-H」シリーズをCPUに採用した機種を多数展開しました。「ESR-H」は後に電子手帳にも採用され、その系譜は「ESR-L」へと受け継がれ、最終的には汎用RISC 32ビットCPUへと進化していきました。一方、工業高校向けモデルなど一部機種ではZ80シリーズCPUを採用していました。

シャープのポケコンは、BASIC機能やプログラムの互換性においていくつかの系統に分類されます。機種によってBASIC命令や関数の有無、表示文字数や画面領域、メモリ容量が異なり、プログラムの移植には修正が必要な場合がありました。しかし、同じ系統の機種間では、専用の通信ケーブルを用いたプログラムの直接転送が可能な場合もありました。

主な機種シリーズは以下の通りです。

PC-1200系: ローエンドからミッドレンジモデル。多くの機種が発売され、独自の8ビットCPU「ESR-H」を搭載していました。一体型のマイクロカセットとサーマルプリンタが用意された機種もありました。PC-1250シリーズは、ユーザーによる機械語解析が進み、ポケコンブームの火付け役となった機種です。
PC-1400系: 関数電卓機能を備え、統計計算にも対応したシリーズ。学校向けモデルや情報処理技術者試験用アセンブラを搭載した機種もありました。
PC-1350系: 24桁×4行表示の大画面とRAMカード、シリアルインタフェースを搭載。サイズが大きくなったため、ポケットへの収納は困難でした。
PC-1500系: 大型フラグシップモデル。グラフィック表示や機械語サポートが特徴でした。
PC-E500系: 新開発の8ビットCPU「ESR-L」を搭載。RAMファイル機能や構造化BASIC命令に対応した上位機種です。
PC-G800系: 学校教育用を主としたシリーズ。Z80互換CPUを搭載しており、BASIC、CASLアセンブラ、機械語モニタを備えていました。

カシオ計算機

カシオは、PB-100系、FX-860P系、PB-700系といった主要シリーズを展開しました。PB-100系は入門機として人気があり、安価で多くの機種が発売されました。FX-860P系は高機能モデルで、多次元配列や長変数名に対応し、組み込みプログラムも豊富に搭載していました。PB-700系は上位機種として、パーソナルコンピュータに近しいBASIC文法を採用していました。

日本電気 (NEC)

NECはPC-2001を発売しました。これは、他のポケコンとは異なり、大型液晶やファンクションキーを備えた本格的なハンドヘルドコンピュータでした。

東芝

東芝はIHC-8000 (Pasopia Mini) を発売しました。一体型プリンターとパソコンとの接続機能が特徴です。

周辺機器

各メーカーは、ポケコン用の周辺機器も数多く販売していました。カセットレコーダー、プリンター、メモリ拡張カード、通信ケーブルなど、ポケコンの機能を拡張するための様々な機器が用意され、ユーザーは自身の用途に合わせた構成が可能でした。

まとめ

ポケットコンピュータは、限られたリソースの中で最大限の機能を実現した革新的なデバイスでした。その歴史は、コンピュータ技術の発展と社会の変化を反映しており、現在ではレトロな存在として、多くの愛好家を魅了し続けています。この記述が、ポケコンの歴史を理解する一助となれば幸いです。

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