電子手帳

電子手帳とは

電子手帳は、紙の手帳の機能を電子機器で再現した製品です。英語では「Electronic organizer」と呼ばれます。1980年代から1990年代にかけてビジネスマン向けに広く普及しましたが、2000年代には低価格・低機能な子供向け玩具が主流となりました。

概要

電子手帳は、携帯情報端末（PDA）が普及する以前に市場に出回った過渡的な製品でした。パソコンなどの他の情報機器との連携機能がなく、データのバックアップも容易ではありませんでした。そのため、落下や浸水などの事故により、入力したデータが失われる危険がありました。また、初期の電子手帳では、電池交換の際にデータを失う可能性もありました。これらの問題から、パソコンとの連携を重視したPDAや、電話機能を持つ携帯電話に市場を奪われ、その大半が姿を消しました。しかし、価格の安さから、子供向けのおもちゃ市場では一定の人気を保っています。

歴史的経緯

紙と筆記用具は、携帯性に優れ、長期間の記録媒体として利用されてきました。しかし、記録情報が増えるにつれて、必要な情報を検索することが難しくなるという欠点がありました。特に、手帳は逐次的に情報を記録することが多いため、整理せずに記録すると、情報が散逸してしまうという問題がありました。このような背景から、情報を整理する装置へのニーズが高まりました。

登場

1980年代半ば、日本の電卓メーカーがこのニーズに応える形で電子手帳を開発しました。1983年にカシオ計算機、1984年にシャープが相次いで発売しました。初期の電子手帳は、電話番号と名前をカタカナで入力し、LSI回路とプログラムで50音順に自動ソートする機能を持っていました。1980年代末には、かな入力や漢字変換が可能な機種が一般的になりました。

発展

その後、電子手帳は高機能化が進み、スケジューラー、外部メモリ、電子辞書、ゲーム、鉄道乗り換え案内などの機能が追加されました。特に1990年代初頭には、様々な機能を追加できる機種が一般的になりました。しかし、本体の小型化に伴い、記憶容量が限られていたため、機能拡張用のROMを追加すると、小型軽量というメリットが損なわれるという問題がありました。

市場変化

初期の電子手帳は、ボタンやフィルムスイッチが主な入力方式でしたが、高機能化に伴い、タッチパネルを採用した機種も登場しました。しかし、当時の技術的な制約から、手帳としては大きすぎるという問題がありました。一方、紙の手帳業界からは、自由にページを差し替えられるシステム手帳が登場し、消費者の嗜好が電子手帳とシステム手帳に二分されることになりました。システム手帳は1920年にイギリスで発売された6穴バインダーが原型で、1980年代後半から普及し、1990年代半ばにはファッションアイテムとして幅広い層に普及しました。

衰退

1990年代後半から、パソコンが一般家庭に普及し始め、パソコンとの連携を求めるユーザーが増えてきました。しかし、電子手帳メーカーは連携ケーブルやソフトを高価に販売していたため、パソコンとの連携機能を標準で備えた海外製の携帯情報端末に市場を奪われました。これを受けて、シャープは自社の電子手帳「ザウルス」をPDA化し、他のメーカーは電子手帳事業を縮小し、電子辞書や電子翻訳機へとシフトしました。

関連項目

昭和100年問題
ワードプロセッサ
スマートフォン - 電子手帳の直接の後継機ではないが、携帯性に優れ、様々なアプリを入れることで多種多様な使い方ができる。
ポケットベル - シャープが電子手帳と一体化した機種を発売していた。

脚注

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