ポサード

ポサードは、キエフ・ルーシ期から帝政ロシア期にかけて用いられた、城塞（クレムリまたはデティネツ）の外に位置する市場や商工業者が密集して住む地区を指す用語です。その語源は「移住地」を意味し、歴史の中でその名称と形態を変えてきました。

名称の変遷

ポサードの語源は「移住地」に由来します。キエフ・ルーシ時代、都市の中心部は丘の上に築かれた城塞内にあり、その外側の居住地域は「ポドール」（裾、山麓を意味するロシア語）と呼ばれていました。また、商工業者の居住区は「リャドク」という名称で区別されていました。

12世紀から13世紀にかけて、ウラジーミル大公国で城塞外の商工業者の居住区を「ポサード」と呼ぶ用法が定着しました。この名称は、1923年から1929年の行政改革期に「ポショーロク」と改名されましたが、現在でもパヴロフスキー・ポサードやセルギエフ・ポサードのような自治体名や、都市内の地区名にその名残が見られます。

集落の変遷

キエフ・ルーシ期

キエフ・ルーシ期のポサードは、商人や職人が住み、活気ある市場が形成されていました。市場では、陶器、武具、ガラス製品、銅製品、イコン、衣服、食料品、食塩、蝋など、様々な商品が取引されていました。ほとんどの大都市にはポサードが付随していましたが、都市が攻撃を受けた際には、ポサードはしばしば徹底的に破壊されました。住民は城塞内に逃れるか、あるいは戦禍に巻き込まれて命を落とすこともありました。これは、都市が小規模であったり、急な襲撃を受けた場合、城塞の門をすぐに閉鎖する必要があったためです。

帝政ロシア期

帝政ロシア時代になると、ポサードは都市の重要な一部として発展を続けました。商工業の中心地としての役割は変わらず、多くの人々がポサードで生活し、働いていました。ポサードは都市の経済活動を支える上で不可欠な存在であり、その発展は都市全体の成長に大きく貢献しました。都市計画が進むにつれて、ポサードはより整備され、住みやすさも向上しました。

ポサードは、その歴史を通じて、都市の社会経済的な中心として重要な役割を果たしてきました。その名称や形態は時代とともに変化しましたが、都市における商工業の中心地としての役割は一貫していました。

参考文献

井桁貞義編 『コンサイス露和辞典』 三省堂、2009年。

関連項目

マーケットタウン

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