ポホヨラ

ポホヨラ：フィンランド神話の謎めいた北の国

フィンランド神話において、ポホヨラ（Pohjola）は重要な役割を担う伝説上の地名です。その名称は「北の国」を意味し、地理的にはラップランド地方や古カイヌー地方を指すと考えられています。しかし、ポホヨラは単なる地理上の場所にとどまらず、神話の文脈では、永遠に凍てつく北極圏、悪しきものの発祥地、不吉な予感を呼ぶ地として描かれ、病気や霜といった災厄をもたらす源泉とされています。カレワラの世界では、サーミ人の地でもあるとされています。

ポホヨラは、カレワラの民が住むヴァイノーラとは対照的な存在であり、敵対的な関係にあります。この地の支配者として君臨するのは、強大な魔力を持つ魔女、ロウヒです。ロウヒは、偉大な鍛冶師セッポ・イリマリネンに、魔法の道具サンポの製作を命じました。

サンポは、豊穣の象徴として描かれる魔法の挽き臼です。ギリシャ神話の豊穣の角（コルヌコピア）と似た性質を持ち、ポホヨラの人々に莫大な穀物を産み出しました。さらに、サンポには星々が埋め込まれ、その回転する蓋は天の円蓋、すなわち星空そのものを象徴しているとも解釈されています。

サンポはロウヒの所有物となり、その獲得を巡って多くの物語が展開します。冒険家レンミンカイネンや賢者ワイナミョイネンなども、ロウヒの娘との結婚を願い、サンポの製作と同等かそれ以上の偉業を課せられたものの、成功には至りませんでした。最終的に、イリマリネンはサンポを完成させ、ロウヒの娘と結婚し、盛大な結婚式がポホヨラの広間で執り行われました。

フィンランド神話において、ポホヨラは世界の支柱となる柱の根元に位置するとされています。北の地平線の彼方にあり、ロウヒはサンポを所有することで莫大な富と権力を得ました。しかし、南に住む人々はサンポを手に入れようと多くの争いを引き起こし、最終的にサンポは破壊され失われます。このサンポの破壊と喪失は、北極の世界樹の崩壊を暗示する象徴的な出来事であり、カレワラの重要な主題となっています。

ポホヨラは、単なる地理的場所というだけでなく、神話的な象徴性を帯びた、複雑で奥深い存在なのです。永遠の寒冷、悪の起源、豊穣と破壊、そして世界樹の根元というその位置づけは、フィンランド神話の根幹をなす重要な要素と言えるでしょう。ポホヨラという地名を冠した企業や作品も存在し、その文化的影響力の大きさを示しています。例えば、保険会社やバス会社、シベリウスの交響詩『ポホヨラの娘』、そして小惑星などがあります。これらの事実は、ポホヨラという概念が、フィンランドの文化や歴史に深く根付いていることを示唆しています。

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